6:15 PM - 7:15 PM
[II-EOP06-05] もやもや病と肺高血圧症合併例の病因および臨床像における多様性
Keywords:肺高血圧症, もやもや病, RNF213
【はじめに】もやもや病(MMD)と肺高血圧症(PH)の合併が過去に少数例報告されているが、その病因と臨床像には不明な点が多い。【症例】筆頭演者が経験したMMD+PHの2例はいずれも多発性末梢性肺動脈狭窄(PPS)を合併し、1例はさらに腎動脈狭窄も有していた。複数の臓器の血管病変を生じる原因を明らかにするために行った遺伝子解析において、2例ともにRNF213のホモ接合性変異(p.Arg4810Lys)が検出された。RNF213はMMD感受性遺伝子であり、ヘテロ接合性変異でMMDの発症率が高まることが知られている。今回RNF213のホモ接合性変異は、脳血管以外の血管(肺、腎)にも狭窄病変を生じ、MMD+PH例の病因のひとつであることが判明した。本邦では、共同演者の経験例を含めて過去に数例のMMD+PHが報告されているが、PPSや腎動脈狭窄の有無は症例により異なり、上行大動脈、動脈管や腹部大動脈の分枝に拡張・蛇行病変を認めた例もあることから、MMD+PH合併例の臨床像は多様であると考えられる。さらに、病因と考えられる遺伝子変異としてBMPR2、ACTA2、ELNの変異がそれぞれ1例において報告されており、複数の病因がMMD+PH合併例の多様な臨床像を生じていると推測される。治療として、多くの例で肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬が用いられたが、総じて効果は限定的であった。従って、MMD+PH合併例に対しては、PAH例とは異なる特異的な治療戦略が必要である。また、経過中に脳出血を生じた例があり、PAH治療薬の使用に際しては、全身の血管への作用、とくにMMDの症状の増悪には注意を要すると思われる。【まとめ】RNF213のホモ接合性変異がMMD+PH合併例の新たな病因と判明し、RNF213の機能解析などによって更なるPH発症機序の解明につながることが期待される。一方、MMD+PH合併例の予後を改善するためには、多施設が力を合わせて症例の集積を進め、多様な病因と臨床像を踏まえた特異的な治療法を確立する必要がある。