第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

一般口演 27 (II-OR27)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 1

2017年7月8日(土) 08:30 〜 09:20 第5会場 (1F 展示イベントホール Room 5)

座長:土井 拓(天理よろづ相談所病院小児科、先天性心疾患センター)

08:30 〜 09:20

[II-OR27-02] 肺末梢血管・肺胞の新生促進を目指した肺高血圧症を合併する新生児慢性肺疾患に対する新規治療法の開発

桂木 慎一1, 石田 秀和1, 那波 伸敏1, 馬殿 洋樹1, 石井 良1, 成田 淳1, 高橋 邦彦2, 小垣 滋豊1, 大薗 恵一1 (1.大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学, 2.大阪府立母子保健総合医療センター 小児循環器科)

キーワード:新生児慢性肺疾患, cGMP, Sildenafil

【背景】サーファクタント製剤開発以降の新生児慢性肺疾患(CLD)は超早産児における肺胞と末梢肺血管新生の未熟性に起因する。近年、新生児医療の発展に伴い超早産児の生存率が改善するとともにCLD患者数は増加しており、重症例では肺動脈性肺高血圧症(PAH)を合併してしばしば治療に難渋し、予後不良である。近年、肺血管と肺胞発生におけるNO-cGMP系の役割が明らかになり、治療標的として注目されている。
【目的と方法】NO-cGMP系活性化によるCLD治療の可能性を検討するため、日齢1のラットにVEGF阻害薬(SU-5416)を皮下投与し、日齢22に生存率、体重、肺胞形成の指標として肺胞Radial Alveolar Count(RAC)、肺血管新生の指標として組織免疫染色と硫酸バリウムを用いた肺動脈造影CT、右室肥大の指標として右室/左室重量比を用いてCLDとPAHの重症度を評価する疾患モデルを作成した。また、この疾患モデルに対してsildenafilを日齢10から投与し、日齢22に各指標を評価した。
【結果】疾患モデルでは死亡率の上昇傾向と有意な体重減少を認めた。肺組織では肺胞構造の粗雑化と肺血管数の減少を認めたが明らかな炎症細胞浸潤は認めず、これらはサーファクタント製剤開発以降のCLDにおける肺組織病理像の特徴に合致するものであった。肺動脈造影CTでは肺末梢血管容積の減少を認め、右室/左室重量比の著明な増加を認めた。また、Sildenafil投与により、死亡率や体重減少に改善傾向を認め、右室/左室重量比と肺胞RACの有意な改善を認めた。
【結語】NO-cGMP系の活性化は肺末梢血管新生と肺胞発達を促すことで重症肺高血圧症を伴うCLDを効果的に改善させる可能性が示唆された。