第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

外科治療

一般口演 33 (II-OR33)
外科治療 6

2017年7月8日(土) 09:20 〜 10:10 第6会場 (1F 展示イベントホール Room 6)

座長:大嶋 義博(兵庫県立こども病院 心臓血管外科)

09:20 〜 10:10

[II-OR33-01] 大動脈後壁再建後に冠動脈移植を行う動脈スイッチ手術の遠隔期成績

池田 義1, 中田 朋宏1, 馬場 志郎2, 平田 拓也2, 湊谷 謙司1 (1.京都大学 大学院医学研究科 心臓血管外科, 2.京都大学 大学院医学研究科 発達小児科学)

キーワード:動脈スイッチ手術, 大血管転位, 遠隔期成績

【目的】動脈スイッチ手術(ASO)において、肺動脈基部に冠動脈を移植した後に大動脈再建を行う方法が一般的であるが、われわれは、適切な移植部位を高い自由度で選択できるよう、大動脈後壁を縫合した後に冠動脈移植を行うVouheの方法を採用している。今回、遠隔成績から手技の妥当性を検討した。【対象】1999年以降ASOを施行した27例 (TGA I型 17例、II型8例、Taussig-Bing 2例)。CoA, IAA合併2例。手術時日齢は平均12日、術後観察期間は31日-16年(平均6.2年)。【術式】大動脈はSTJの2-3mm遠位、肺動脈は分岐部の1-2mm近位で切離。肺動脈基部と遠位大動脈の後壁半周を縫合した後、冠動脈フラップと縫合線の位置関係により、肺動脈基部 and/or 遠位大動脈の前面に切開を加えて冠動脈を移植し、最後に前壁縫合を完成する。本法により縫合線上あるいは縫合線より遠位にも無理なく冠動脈移植が可能となる。【方法】診療録から術後遠隔期合併症について後方視的に検討した。【結果】手術死亡1例、遠隔死亡1例で15年間の累積生存率は92.6%であった。遠隔期心カテ(n=21)にてLVEDV 104±10 % of normal, LVEF 76±6 %、最新BNP値は22.3±15.1 pg/mlと心機能は良好だった。術後合併症としては、2例で術後1ヶ月目に左冠動脈狭窄が生じ、1例は緊急LMT形成術を施行したが死亡(遠隔死亡例)、1例はCABG(LITA-LAD)を施行した。両者とも初期の症例で、術中選択的冠還流手技の改良以後、冠動脈合併症は生じていない。経過中に2度以上のARを2例に認めた。圧較差20mmHg以上のPSを認めた症例はなかった。以上の合併症発生をendpointとした15年間の回避率は82.7%であった。 術後3.5年以降に新たな合併症の発生は認められなかった。【結語】本法の遠隔期成績は良好であった。一般的な方法と比べて主肺動脈の切離ラインを低くできることが術後PS防止に寄与すると思われた。 大動脈弁機能も概ね問題なく、経時的なAR悪化傾向は認められなかった。