第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

複雑心奇形

一般口演 37 (II-OR37)
複雑心奇形

2017年7月8日(土) 16:15 〜 17:05 第6会場 (1F 展示イベントホール Room 6)

座長:北川 哲也(徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野)

16:15 〜 17:05

[II-OR37-04] Norwood+shunt術を施行した左心低形成症候群のGlenn前の心肺循環

浜道 裕二, 其田 健司, 若宮 卓也, 松井 拓也, 桑田 聖子, 齋藤 美香, 石井 卓, 稲毛 章郎, 上田 知実, 矢崎 諭, 嘉川 忠博 (榊原記念病院循環器小児科)

キーワード:HLHS, Norwood, RV-PA shunt

【背景と目的】左心低形成症候群及びその類縁疾患(HLHS)に対し、当院ではNorwood+shunt術(RV-PA/BT)を施行しているが、肺動脈が細く心機能が低下している印象がある。non-HLHS疾患でshuntを施行された群を対照として、HLHSのGlenn前の心肺循環を評価した。【対象と方法】対象はNorwood+shunt術を施行し、2012年8月~2016年7月にGlenn前の心臓カテーテル検査をした2歳未満の31例(Nor群: RV-PA28例、BTshunt3例)で、21例は両側肺動脈絞扼術が先行していた。対照をnon-HLHSでShuntを施行し同時期に検査をした44例(Shunt群:BT/Central40例、RV-PA4例)とし、心肺循環指標を2群間で比較した。【結果】カテ年齢は両群間で差がなかった(0.68 vs. 0.71 ヵ月)。左室が主心室である例はShunt群で多かった(3% vs. 27%: p=0.016)。NT-proBNP値はNor群が高値(10491 vs. 1386 pg/ml: p=0.0046)であったが、主心室の拡張末期容積、収縮末期容積、駆出率、拡張末期圧、II度以上の房室弁逆流の頻度は両群間で有意差がなかった。肺動脈係数はNor群で小さく(161 vs. 255 mm2/m2: p=0.00017)、左肺動脈径のみでも差を認めた(17.7 vs. 21.4 mm/m2: p=0.010)。肺動脈への血流はNor群で少なく(2.8 vs. 3.6 L/min/m2: p=0.033)、肺体血流比も小さかった(0.58 vs. 0.77: p=0.016)が、肺動脈圧に有意差はなかった(15.8 vs. 16.2 mmHg)。大動脈酸素飽和度はNor群で有意に低かった。【考察と結語】Glenn術前においてNor群は肺動脈が細く肺血流は少ないにもかかわらず、心室の拡大の程度はShunt群と同等であった。また、Nor群とShunt群で心筋のstretchを示す指標はすべて差を認めないにもかかわらず、NT-proBNP値はNor群で非常に高値であった。RV-PA shuntの侵襲による心筋障害が心室拡大、NT-proBNP高値に関与している可能性がある。Nor群では早期にGlenn術で心筋負荷を軽減した方が良いかも知れない。