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[II-P21-05] 胎児水腫を伴う修正大血管転位症に対して肺動脈絞扼術を行った1例
Keywords:胎児水腫, 修正大血管転位症, 肺動脈絞扼術
【背景】修正大血管転位症(cTGA)の解剖学的心内修復術であるダブルスイッチ手術の際に、左心室圧が低下している症例に対しては、術前に肺動脈絞扼術(PAB)による左心室トレーニングが行われる。近年、PABが左室拡張末期径・左室/右室容積比を増加させ、三尖弁の接合を改善させ、三尖弁逆流(TR)を改善させることが報告されている。【症例】妊娠32週の胎児心エコー検査で、cTGA、TR、僧帽弁閉鎖不全(MR)と診断した。胎児水腫のために、妊娠継続は困難であり、妊娠33週6日に帝王切開で娩出した。出生直後、呼吸は確立せず徐脈を呈したため気管内挿管にて蘇生し、人工呼吸、カテコラミン、PDE3阻害薬、利尿薬による治療を開始した。肺血管抵抗の低下に伴いMRは軽減したが、高度のTRが残存し、カテコラミンから離脱できなかった。日齢80に心臓カテーテル検査を施行し、左室/右室収縮期圧比(LVp/RVp) 0.37、右室拡張末期容積正常値比 228%、TR 3度、MR 1度の結果を得た。主肺動脈内で試験的に 1mlバルーンを拡張させ左室圧を上昇させたところ、心エコー上、TRの減少を認めたため、日齢108にPABを施行した。術中もPABによって心室中隔が右室側に偏位しTRが減少することを確認した。MRのため、LVp/RVp 0.67のPABにとどまったが、術後にTRは減少し、カテコラミンとPDE3阻害薬からの離脱が可能となり、生後7ヶ月で退院した。現在も中等量のTRが残存しているが、成長に伴い徐々にPABの圧較差が増大してきており、将来のダブルスイッチ手術を見据えつつ、内科的治療を継続中である。【結語】胎児水腫に至った両房室弁逆流を伴うcTGAに対して、内科的治療に加えてPABを行い、心不全の改善を得ることができた。カテーテル検査中の肺動脈内バルーン拡張試験は、PABの効果を予想するのに有用であると思われた。