第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

複雑心奇形

ポスター (II-P21)
複雑心奇形 2

2017年7月8日(土) 18:15 〜 19:15 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:岡村 達(長野県立こども病院心臓血管外科)

18:15 〜 19:15

[II-P21-06] 完全大血管転位症の胎児診断が予後に及ぼす影響

永田 弾 (トロント小児病院)

キーワード:完全大血管転位, 胎児診断, 大動脈スイッチ術

[背景]完全大血管転位症(TGA)は、大動脈スイッチ術(ASO)を行うことで良好な予後が得られる。しかし、出生後まもなく、高度のチアノーゼが原因で死亡する症例も存在する。今回の目的はTGAの胎児診断率と、胎児診断が出生後の管理や予後に与える影響を明らかにすることである。[方法]対象は2009年から2014年にカナダのオンタリオ州でTGAと診断された151例(胎児診断[F]群 75例、新生児診断[N]群 76例)で、診療録を元に後方視的にデータ収集・解析を行った。ただし、F群の5例(人工流産4例と32週未満で出生した1例)は除外した。母体の住所から地域ごとの胎児診断率を算出し、臨床経過・治療・予後について2群間(F群 vs N群)で比較検討した。[結果]胎児診断率は全体で約50%であり、Toronto area(72%)での診断率は, Northern Ontario(14%)よりも有意に高かった(p<0.05)。N群には三次施設へ搬送される前に死亡した症例が4例含まれており、残りの142例(F群 70例、N群 72例)において、出生から入院までの時間(1.37[0.5-4] v.s. 10.38[1-696] hours p<0.001)、PGE開始までの時間(0.1[0-7.45] v.s. 5.3[0.88-643] hours p<0.001)、BAS施行までの時間(5.3[1.33-46.5] v.s. 14.9[3.5-645] hours, p<0.001)はF群の方が有意に短かった。ASO施行時期(6[3-41] v.s. 9[3-62] 生日 p=0.002)は有意にF群の方が早かったが、人工心肺時間に有意な差はなかった。また、総入院期間(20[10-175) v.s. 16[8-99]日間 =0.024)はF群で有意に長かった。出生後1年以内の死亡はF群2例(2%)、N群9例(12%)であり、Kaplan-Meierを用いて検討すると両群間に有意な差がみられた(p<0.05)。[結論]オンタリオ州におけるTGAの胎児診断率は50%であったが、地域間に差がみられた。胎児診断によって出生後の治療を速やかに開始することができ、予後にも影響を及ぼす可能性が示唆された。