第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション 4 (II-PD4)
無脾症候群(治療困難症例の検討を含めて)

2017年7月8日(土) 08:30 〜 10:00 第1会場 (1F 展示イベントホール Room 1)

座長:先崎 秀明(埼玉医科大学総合医療センター小児循環器)
座長:山岸 正明(京都府立医科大学小児心臓血管外科)

08:30 〜 10:00

[II-PD4-04] 当院における無脾症の治療成績と問題点

青木 正哉1, 池野 友基1, 廣野 恵一2, 小澤 綾佳2, 齋藤 和由2, 仲岡 英幸2, 岡部 真子2, 市田 蕗子2, 江本 憲昭3, 芳村 直樹1 (1.富山大学 医学部 第一外科, 2.富山大学 医学部 小児科学, 3.神戸薬科大学 臨床薬学)

キーワード:無脾症, TAPVR, 房室弁逆流

【目的】当院において手術介入した無脾症候群の手術成績について検討した。【対象】2005年4月以降に手術介入した21例を対象とした。全例Fontan candidatesで、TAPVR合併は18例で、うちPVOを合併した8例に計13回(4例で1回、3例で2回、1例で3回)のPVO解除術を施行。房室弁の形態は共通房室弁15例、三尖弁6例であった。4例(TCPC後:3例、BDG後:1例)に肺生検を行い(3例:房室弁置換時、1例:PVO解除術時)、Endothelin-1(ET-1)の発現をreal time PCR法で調べた。【結果】[成績] 初回手術の内訳は、SP shunt:5例、TAPVR repair:5例、PDA ligation+PAB:5例、EAAA+PAB:2例、BDG+CAVV plasty:1例、CAVV plasty:1例、Bil PAB:1例、UF:1例であった。13例がTCPCに到達、1例はBDGに到達したが肺高血圧のためにTCPC適応外。12例が生存しており、5年生存率は56.1%。死亡は9例で、うち6例がBDG到達前に死亡(房室弁形成術後:2、房室弁形成+PVO解除術後:1、房室弁形成+Norwood術後:1、房室弁逆流による心不全:1、低酸素血症:1)。3例がTCPC術後に死亡(上室性頻拍:1、Failed Fontan:1、発熱・循環破綻:1)。BDG前に弁形成を要した症例 (n =6)はBDGと同時に弁形成あるいは弁形成を要しなかった症例 (n =15)よりも有意に生存率が低かった(p = 0.0495)。PVO解除を行った症例 (n = 8)とPVO解除を要さなかった症例 (n = 13)の生存率に有意な差は認めなかった(p = 0.579)。[肺生検]肺高血圧のため、TCPC適応外とされた症例では肺動脈の中膜肥厚が顕著で、ET-1も強発現していた。【まとめ】PVO解除術の成績は向上し、TAPVRは予後不良因子ではなくなった。一方、BDG前に弁形成をせざるを得ない症例の予後は不良であった。ET-1はFontan循環に何らかの悪影響をきたしている可能性が示唆された。