The 53rd Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Symposium

Symposium 9 (II-S09)

Sat. Jul 8, 2017 10:10 AM - 11:40 AM ROOM 7 (Seminar and Exchange Center, 2F The Music Studio Hall)

Chair:Shinnichi Ohtsuki(岡山大学医学部小児科)
Chair:Kenichi Kurosaki(国立循環器病研究センター小児循環器集中治療室)

10:10 AM - 11:40 AM

[II-S09-02] インターネットを利用した胎児心エコーの遠隔ハンズオンの試み

川瀧 元良 (東北大学産婦人科/ 神奈川県立こども医療センター新生児科)

 重症心疾患の出生前診断は、近年、急速に普及している。しかしながら、完全大血管転位や総肺静脈還流異常など一部の重症心疾患は、技術的な難しさのために、依然胎児診断率は低率であり、胎児心臓スクリーニングの普及が期待されている。日本においては、胎児心臓スクリーニングは第一線の産科医、超音波技師にゆだねられている。産科医の絶対数は依然として減少傾向にあり、その不足は現在社会問題になっている。また、産科領域で働く超音波技師の数は極めて少数である。重症心疾患の胎児心臓スクリーニングには高いレベルの技術が必要とされる。胎児心エコー技術の習得のためにセミナーに参加することが必要になる。しかし、現在開催されているセミナーのほとんどは、人口が多く交通の便が良い大都会で開催されている。地方で診療にあたっている産科、超音波技師がこのようなセミナーに参加することは極めて困難である。また、大都会にいたとしても、日常診療に忙殺されている産科医、超音波技師にとって、セミナーに参加することは、現実的には非常に困難である。近年IT技術は長足の進歩を遂げている。光回線を使ったインターネットは急速に普及し、安価で高品質の通信手段が使いやすくなった。胎児心エコーを検査室で行い、胎児心エコーのノウハウを指導者が検査者に伝える、ハンズオンは非常に有効な教育手段であり、これまで数多く行われてきた。しかし、被験者は胎児と妊婦さんであり、プライバシーの保護、負担軽減を考慮すると、一度にハンズオンを受けられる人数はわずか数人に限られる。指導者は検査室まで行く必要があり、ハンズオンができる場所や回数に大きな制約がある。そこで我々は、胎児心エコーを行うクリニックと距離的に離れた場所にいる指導者をインターネットで接続して行う “遠隔ハンズオン”のシステムを考案し、実施した。これまでに実施した遠隔ハンズオンの経験を振り返り、さらに発展させるために、参加者に対して行ったアンケートを行ったので報告する。
対象:15施設の医師、検査技師、助産師30人が参加した。あらかじめ同意が得られ、正常胎児であることを確認され、母児ともに状態の安定した単体の症例を対象とした
方法:クリニックの超音波断層装置から得られる動画像、プローベの位置などを撮影するカメラ画像、および検査者との会話音声の3つの情報を、インターネットで検査者と指導者が共有しながらハンズオンを行った。1回の検査は30分以内に終了とした。全員に記名式のアンケート調査を行った。
結果:品質に関しては、検査室、指導者の両方が有線LANで接続した場合、高い品質の画像音声を共有することができた。機器の取り扱いに関しては、ITの知識が乏しく機材の使用に慣れていない参加者にはやや使い方に難しい点があり、ITエンジニアのサポートが必要であった。満足度に関しては、多くの参加者はこのシステムに満足しており、遠隔ハンズオンの継続および胎児診断への応用を希望されていた。
考案:このシステムは、これまでの制約を打ち破る画期的なシステムであり、教育的効果の高いとされるハンズオンの効率をさらに上げることが期待できる。今後、多施設共同研究を実施し、このシステムの有用性や今後の改善点等を明確にしていきたいと考えている。
結語:インターネットを使った遠隔ハンズオンは非常に有用である。