第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 9 (II-S09)
小児循環器領域の遠隔医療

2017年7月8日(土) 10:10 〜 11:40 第7会場 (2F 研修交流センター 音楽工房ホール)

座長:大月 審一(岡山大学医学部小児科)
座長:黒嵜 健一(国立循環器病研究センター小児循環器集中治療室)

10:10 〜 11:40

[II-S09-03] 胎児超音波遠隔診断を用いた医療連携

菱谷 隆 (埼玉県立小児医療センター 循環器科)

キーワード:遠隔診断, 胎児心臓病, 医療連携

高精度の超音波診断装置により胎児疾患の早期発見が可能となった。遠方で専門家による診断が受けられる胎児遠隔診断システムを構築した。今回遠隔診断実績、遠隔診断の正確さ及び産科施設との医療連携に与えた効果を検証した。テレビ会議システム(NTT Meeting Plaza ver.4.5/6.0)を使用して6産科施設(後に9施設)との間で実施した。【遠隔診断の実績】2009年10月1日から2013年10月31日まで胎児遠隔診断は4年間合計で160件(117例)実施した(録画送受信145件(うちSTIC 35件)、リアルタイム送受信15件)。【遠隔診断と生後診断との比較】比較した心疾患疑い例24例の中で診断が大きく食い違った2例では、送信された画像がほぼ四腔断面像のみであり全体に情報量不足が原因であった。【医療連携への効果の検討】(以下3産科施設で検証)当科外来紹介件数は大幅に減少した半面、遠隔診断件数は増加した。産科からの周産期医療施設への直接紹介が増加傾向となった。 緊急搬送件数は減少したが、総肺静脈還流異常はスクリーニングから漏れる傾向にあった。【心疾患陽性率】(心疾患例数 / 紹介された例数)は胎児遠隔診断では56%、一般胎児診断心臓外来では76%と遠隔診断では偽陽性が多い反面、発見された心疾患の数は外来診断5年間で22例に対して遠隔診断は3年間で50例と多くの心疾患が見つかった。【考察】 画像を簡便に送信して専門医に相談できる遠隔診断の件数が増加し、産科からの遠隔診断紹介例が増加し、軽微な異常も含めて遠隔診断で精査するようになり、結果として疾患が多く見つかるようになった。重症度に応じて分娩場所を決定し、安全で効率の良い新生児医療につながった。正確な診断に影響したのは、必要は部分の鮮明な画像を送信できるかどうかであった。専門医との相談の過程でフィードバックを受けることが可能となり基本的な胎児診断技術のある産科スタッフの優れた教育ツールとして機能した。