第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ミニオーラルセッション

外科治療

ミニオーラルセッション06(I-MOR06)
外科治療

2018年7月5日(木) 15:00 〜 15:35 ミニオーラル 第3会場 (313)

座長:猪飼 秋夫(静岡県立こども病院 心臓血管外科)

[I-MOR06-03] 総動脈幹症に対する段階的治療戦略の成績

小林 真理子, 麻生 俊英, 武田 裕子, 太田 教隆, 大中臣 康子 (神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科)

キーワード:総動脈幹症, 肺動脈絞扼術, 外科治療

【背景】新生児管理の進歩した今日、二心室疾患で段階的治療が選択される機会は少ない。新生児早期の治療が必要な総動脈幹症(TA)においても同様である。しかし、新生児の右室流出路再建にhomograftが自由に使えない我が国では段階的アプローチも選択肢の一つとなる。TAに対し、初回手術として肺動脈絞扼術(PAB)をおこなった段階的治療の成績を後方視的に検討した。
【方法】過去13年間に外科治療をおこなったTA 18例のうち初回PABを行った17例が対象。PAB時の年齢、体重は、それぞれ25±1日、3.0±0.5kg。Collett-Edwards分類でI型11例、II型6例。絞扼部位は、両側肺動脈14例、主肺動脈3例。左室低形成や冠動脈異常を理由に4例を単心室修復の適応とした。根治術到達や生存率、さらに使用した導管径を調査した。
【結果】初回PABの手術死亡はなく、二心室修復を目指した13例中11例が平均8ヶ月後、Rastelli手術に到達した。手術時年齢は9±4ヶ月、体重は6.1±1.5kg。右室流出路に用いた導管は、10例でePTFE graft(内訳:ePTFE fan-shape valve(3)、ePTFE三弁付14mm(2), 16mm(2), 18mm(1)、ePTFE 6mm (1)、ePTFE monocusp patch(1))で、残り1例で牛頚静脈弁付き導管(Contegra 14mm)であった。残りは根治術待機中1例とPAB後転院した1例。フォンタン適応4例のうちTCPC到達2例、待機中1例。全体の5年生存率は81.3±9.8%(観察期間5.8±3.6年)。
【考察】TAに対し、段階的アプローチによって新生児期の体外循環の使用を回避できた。また、新生児一期的根治であれば12mmのpulmonary homograftが用いられるところ、体重6kgであれば16mm径のgraftが挿入可能と思われる。
【結語】TAに対し、段階的アプローチによってRastelli手術時の右室―肺動脈間導管の2~3サイズアップが期待できる。