[I-OR02-04] 超音波エラストグラフィを用いたFontan術後の肝硬度と臨床所見との関連
キーワード:フォンタン, 中心静脈圧, 肝線維化
【背景】Fontan術後の肝線維化の主因として中心静脈圧(CVP)上昇によるうっ血性肝障害が報告されている。しかし、静脈圧上昇だけでは肝障害が説明できない症例も存在し、その機序は未だ十分に解明されていない。【目的】Fontan術後の肝硬度に関わる臨床因子を明らかにする事。【対象と方法】2014年から2017年に超音波エラストグラフィ(FibroScan)を用いて肝硬度(LSM)を測定したFontan患者53例(年齢中央値11.7(4.2-31.9)歳)を対象とし、LSMと臨床所見の関連を後方視的に検討した。【結果】術後年数は中央値9.7(1.3-18.7)年、LSMは13.2(4.6-45.0)kPa(8kPa以上は線維化の可能性あり)と高値で、これらは有意に正相関した(p<0.001)。CVPは11(7-15)mmHgで、術後年数と有意相関はなかった。LSMは、総ビリルビン値、γGTP、CVP、体心室拡張末期血圧、QRS幅と有意に正相関し(p<0.05)、血小板数とは負相関した(p<0.001)。LSMは、SpO2とは有意相関せず、ACE阻害薬(ACEI)/ARB使用の有無とも関連しなかった。術後5年未満と5年以降でそれぞれ単変量解析すると、術後5年未満ではCVPのみがLSMと有意に正相関した(p=0.023)。一方、術後5年以降では、LSMは、CVP、術後年数、QRS幅と有意に正相関し、ACEI/ARB投与期間とは負相関した(p<0.01)。これらを多変量解析すると、LSMは術後年数、ACEI/ARB投与期間と有意相関した。【結語】Fontan術後患者ではCVPが肝硬度に関与しており、特に術後5年以内の肝硬度悪化にはCVP上昇が関与していた。術後5年以降については、術後年数が肝硬度の独立した因子であり、CVPの程度に関わらず長期間Fontan循環である事自体が肝硬度の増悪因子である事が示唆された。ACEI/ARBの長期投与は肝硬度上昇に抑制的に働く可能性がある。