第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

外科治療

一般口演03(I-OR03)
外科治療 1

2018年7月5日(木) 15:50 〜 16:50 第3会場 (302)

座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院 心臓血管外科)
座長:山岸 正明(京都府立医科大学 小児心臓血管外科)

[I-OR03-05] 血管内治療興隆時代における成人大動脈縮窄症の外科的治療の考察

齋木 佳克, 安達 理, 秋山 正年, 高橋 悟朗, 吉岡 一朗, 早津 幸弘, 鈴木 佑輔, 河津 聡, 熊谷 紀一郎 (東北大学 大学院医学系研究科 心臓血管外科)

キーワード:大動脈縮窄症, 外科治療, 脳分離体外循環

[背景]大動脈縮窄症に対する成人期の開胸下外科治療は、その治療範囲が弓部から近位胸部下行大動脈まで広範囲に及ぶことが稀ではなく、技術的難度が高い治療法となっている。この領域では、症例数の蓄積が少ないもののステンドグラフトを用いた血管内治療の発展が目覚ましい。しかしながら、その成績を評価する前段階として、開胸下外科治療の急性期、ならびに、遠隔期の成績を明らかにしておく必要がある。[対象患者と方法]2001年から20017年までの期間に11症例(平均年齢36.3歳、17-64歳)において大動脈縮窄症に対する治療が実施された。その内訳として、初回治療として行われたのが6例、再発性大動脈縮窄症が3例、先行する大動脈パッチ形成術後の大動脈瘤が2例含まれていた。胸部大動脈ステントグラフト治療が行われたのは1名のみで、他の10例では開胸下外科治療が実施された。開胸アプローチに関しては、大動脈遮断近位部が左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で行えると判断された場合には、左側開胸が選択され、完全または部分弓部置換術の場合には、胸骨正中切開±前側方開胸下で順行性選択的脳分離灌流(SCP)が選択された。[結果] 開胸治療10例中8例において病態として大動脈瘤化病変を伴っていた。SCPが実施されたのは7例で、その平均時間は151.6 分 (27-422 分)であった。術後成績として、院内死亡は無く、脳脊髄障害の合併も見られなかった。平均観察期間47.3ヵ月(6 - 96ヵ月)における大動脈イベント、および、脳血管イベントは見られなかった。[結論]成人期における大動脈縮窄症では、大動脈瘤化病変を伴っていることが多く、また、選択的脳分離体外循環法を併用する必要がある場合が多い。従って、この病態に対する外科治療は侵襲度が高くなっている。しかしながら、単群での評価ではあるものの急性期、ならびに、中期遠隔期成績は良好であり、術後のイベント回避率の観点からも優れた治療法であると言える。