[II-MOR11-04] 左室流出路狭窄を合併した大動脈弓離断、心室中隔欠損において、大動脈弁輪径の成長を長期間待機した後、心室中隔欠損閉鎖術、大動脈弓再建術を達成しえた一例
Keywords:大動脈弓離断, 心室中隔欠損, 大動脈弁狭窄
【緒言】VSDを伴う大動脈離断(IAA)において左室流出路形態が手術術式を左右する。左室流出路狭窄(LVOTO)の程度によっては一期的心内修復術が不可能でYasui法もしくはFontan型手術に向かわざるをえない症例も存在する。今回我々は、VSDを伴うIAAに大動脈弁狭窄(vAS)を合併し、成長と共に大動脈弁輪径(AVD)の拡大を認め月齢8か月に心室中隔欠損(VSD)パッチ閉鎖、大動脈弓再建を施行しえた一例を経験したため報告する。【症例】初診時日齢14、体重2691g男児。呼吸障害を主訴に受診しIAA(A型)、VSD、動脈管開存、vASと診断しlipo-PGE1静注を開始した。AVD:4.1mm(-3.9SD)と小さいため、日齢19に両側肺動脈絞扼術を施行した。月齢3か月に再評価し依然として弁輪径は小さく (5.3mm,-3.2SD)、またVSDから肺動脈弁までの距離が遠かったため心室内reroutingが困難でありYasui法の適応外と判断した。両心室容量が十分大きかったため、一心室修復をできるだけ回避し、Ross-Konno術を目標に更なる大動脈弁輪の成長を待つ方針となった。大動脈弁輪は月齢7か月で6.8mm (-2.5SD)まで成長し、月齢8か月にVSD閉鎖、大動脈弓再建術を施行した。術後の大動脈弁狭窄は超音波検査にて圧較差16mmHgと良好な転帰を辿った。【考察】LVOTOを合併するIAAの手術適応に関する明確な基準はないが、Sugiyamaらの報告では大動脈二尖弁、AVD:-3SD以下、大動脈弁下部狭窄(SAS)等が一期的根治術後のLVOTOの危険因子とされている。本症例では来院時の所見よりVSD閉鎖は困難でRoss-Konno手術の方針として長期間待機の間にAVDが拡大し、最終的にVSD閉鎖が可能となった。大動脈弁の成長を初期に予想を建てるのは困難だが、大動脈弁形態異常が軽微であったことが要因の一つと考えられる。