第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ミニオーラルセッション

心臓血管機能

ミニオーラルセッション12(II-MOR12)
心臓血管機能

2018年7月6日(金) 15:00 〜 15:28 ミニオーラル 第3会場 (313)

座長:早渕 康信(徳島大学大学院医歯薬学研究部 小児科)

[II-MOR12-01] 左室流入血流拡張早期波形に減衰振動運動方程式を適用した左心室弛緩能 (Elastic recoil/Stiffness, Relaxation, Load)の評価

早渕 康信, 小野 朱美, 本間 友佳子, 香美 祥二 (徳島大学大学院 医歯薬学研究部 小児科)

キーワード:拡張能, Elastic recoil , 減衰振動 

【背景】左室拡張能は拡張早期のアクチン・ミオシン Cross-bridging deactivationに伴う弛緩能と拡張末期のStiffnessで示されることが多い。しかし、拡張早期弛緩を示す左室流入血流E波形態は、心筋細胞の伸縮に起因するElastic recoil/StiffnessとCross-bridgingによるRelaxationおよび前負荷(Load)の3要素のバランスで形成される。我々はE波形態を減衰振動の運動方程式(d2x/dt2+c・dx/dt+kx=0)にあてはめ、v(t) = -kx0/ω*exp(-ct/2)*sin(ωt) に適応した [v(t):E波速度; k : ばね定数, Elastic recoil; c: 減衰係数, Cross-bridging relaxation; x0; 変位, Load; ω=(4k-c2)1/2/2] 。【目的】k (1/s2), c (1/s), x0 (cm)の弛緩能評価に対する有用性を検証する。【方法】正常成人、正常小児、小児肥大型心筋症(HCM)を対象とした。E波形を運動方程式にfittingさせるためにLevenberg-Marquardt法を用いた。【結果】全例でk, c, x0が評価可能であった。正常小児では正常成人よりもk が有意に高値であった(247.3±59.4 vs 149.0±42.1, p<0.0001)。c およびx0には有意差が無かった(17.5±5.8 vs 14.3±4.4及び-0.118±0.023 vs -0.117±0.024)。HCMでは、k は正常小児に比較して低値であり(k=161.9±60.7, p<0.001)、x0は有意に高値であった(x0=-0.143±0.078, p<0.01)。cは有意差を認めなかった。これらから小児は成人よりもElastic recoil/Stiffnessが強く、Cross-bridging deactivationによる弛緩が劣っていること、HCMでは、Elastic recoilが弱く、Loadが増大していることが示された。【結語】E波に減衰振動式を適用した拡張能解析はElastic recoil/stiffness, Relaxation, Loadを区別して計測できる拡張能評価に有用な方法である。