[II-OR26-03] 先天性心疾患術後患者における中心静脈カテーテル関連血栓症
キーワード:周術期管理, 中心静脈カテーテル, 血栓症
【背景】先天性心疾患における中心静脈カテーテル関連血栓症(catheter-related thrombosis, CRT)は、肺塞栓や脳梗塞、両方向性グレンルートの閉塞、カテーテル検査、治療のアプローチを困難にする原因となり、注意すべき合併症である。【目的】先天性心疾患術後患者におけるCRTについて、発症の様子と経過、治療および予後を検討する。【方法】2016年4月1日-2017年12月31日に先天性心疾患手術に際して中心静脈カテーテルを新規に留置した177例中、術後に超音波またはCTで血栓の検索を行った33例(日齢3-5歳、中央値3.5ヶ月;1.8-13.6kg、中央値4.6kg;男20例)を対象に、診断の契機、血栓の有無、部位、手術から血栓診断までの期間、検査値の変化、偶発症の有無、治療と転帰について診療録から調査した。【結果】診断の契機はFDP上昇31例、カテーテル挿入部位の腫脹1例、脳梗塞1例。脳梗塞をきたした症例は他の部位でも血栓を検出できなかった。33例中21例(64%、男15例)にCRTを認め、うち6例(29%)は新生児であった。外腸骨静脈にカテーテルを留置した30例中、16例にCRTを認めた。診断は中央値で術後7日(3-21日)で行った。CRTの有無によって診断前3日間のFDP平均値は17.6VS18.0μg/ml(p=0.91)、経過中のFDP最大値は32.7VS27.6μg/ml(p=0.49)といずれも有意差はなかった。診断時に23例でヘパリン持続投与を行っていたが、17例にCRTを認めた。投与量は中央値10IU/kg/h(5-17IU/kg/h)で、診断前3日のAPTTの平均値は44.0VS38.5秒(p=0.36)と有意差なく、ヘパリンで血栓形成は抑制されなかった。21例中13例でワーファリン投与し、7例で血栓の消失を確認した。2例は血管が完全閉塞したためワーファリンは中止した。【結語】先天性心疾患術後はCRT発症リスクが高く、術後早期から見られる。FDP上昇が特異的な検出契機ではないが、早期に超音波検査で検索、治療を開始して合併症を防ぐことができるかもしれない。