第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

集中治療・周術期管理

一般口演26(II-OR26)
集中治療・周術期管理

2018年7月6日(金) 17:10 〜 18:00 第4会場 (303)

座長:大崎 真樹(静岡県立こども病院 循環器集中治療科)
座長:松井 彦郎(東京大学医学部附属病院 小児科)

[II-OR26-04] 新生児開心術後重症乳糜胸に対するリンパ節穿刺造影治療の経験

宮原 義典, 樽井 俊, 山口 英貴, 佐々木 赳, 伊吹 圭二郎, 柿本 久子, 籏 義仁, 石野 幸三, 富田 英 (昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)

キーワード:乳糜胸, 新生児, リンパ節

新生児期開心術後の重症乳糜胸は致死的合併症の一つである.絶食,脂肪制限,中鎖脂肪酸ミルク,オクトレオチド投与などの保存的治療を組み合わせても治療に難渋することが多い.胸膜癒着や胸管結紮などの侵襲的処置は確実性に乏しい.我々は,上記保存的治療が無効であった新生児期開心術後の重症乳糜胸3症例に対して,リピオドールを用いたリンパ管造影を行い,良好な結果を得たので報告する.症例1)2.9kg 女児 完全大血管転位 : 生後12日目に動脈スイッチ施行,術5日目に乳糜胸発症,術17および28日目にリンパ管造影を施行. 症例2)3.4kg 男児 大動脈縮窄心室中隔欠損,CHARGE症候群: 生後9日目に一期的根治術を施行,術2日目に抜管したが,術8日目に乳糜胸のため再挿管両側胸腔ドレナージを施行した.術13および34日目にリンパ管造影を施行した. 症例3)2.8kg 男児 先天性大動脈弁狭窄,術後縦隔炎: 生後7日目にノーウッド手術を施行,術20日目より縦隔炎のためVAC施行,術40日目に閉胸したが乳糜胸を発症した.術60,75,100日目にリンパ管造影を施行した. いずれの症例も保存的治療中に連日50ml/kg/日超の胸水が漏出した.リンパ管造影検査はエコーガイド下に鼠蹊部リンパ節を穿刺し,0.3ml/kg/回のリピオドールを緩徐に注入した.造影後の胸水減少の程度は様々であったが,2から3回の造影で全例胸腔ドレーンを抜去できた. 胸部外科領域術後の難治性乳糜胸に対して,リピオドールを用いたリンパ管造影による診断・治療報告が近年散見されるようになったが,小児例の報告は極めて少ない.リンパ節穿刺によるリンパ管造影は,新生児開心術後の乳糜胸に対しても施行可能かつ有効な治療手段の一つであることが示唆された.