第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ミニオーラルセッション

画像診断

ミニオーラルセッション15(III-MOR15)
画像診断

2018年7月7日(土) 09:00 〜 09:35 ミニオーラル 第2会場 (312)

座長:富松 宏文(東京女子医科大学心臓病センター 循環器小児科)

[III-MOR15-05] 患者データから作製した心臓立体模型を用いた手術シミュレーションの有用性とpitfall

片岡 功一1,2, 河田 政明3, 松原 大輔2, 岡 健介2, 古井 貞浩2, 鈴木 峻2, 安済 達也2, 南 孝臣2, 吉積 功3, 鵜垣 伸也3 (1.自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児手術・集中治療部, 2.自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科, 3.自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児・先天性心臓血管外科)

キーワード:立体模型, シミュレーション, CT

【背景と目的】近年,立体心臓模型を用いた小児心臓手術シミュレーションの有用性が報告されている.当施設では2014年以降,市販のパーソナル3Dプリンターを用いて,患者データから自施設で中空立体心臓模型を作製し,手術シミュレーションや患者/家族への説明に臨床応用してきたので,有用性とpitfallについて検討する.
【対象と方法】対象は10例.手術時年齢は1~12(中央値2)歳,手術時体重9~38(中央値10)kg.疾患は,mirror image CAVSD 1例,Subaortic stenosis 1例,TGA (III) (multiple VSD) 1例,ToF 1例,ToF/PA 1例,DORV 1例,DORV/PS 2例 (1例はanatomically corrected malposition of the great arteries合併),DORV/PA 2例.造影CT画像データを基にパーソナル3DプリンターでABS樹脂製実体模型を造形し,これを鋳型として透明シリコーン製中空立体模型(模型)を作製した.模型を用いたシミュレーションで術式を決定後,手術に臨んだ.模型は家族・スタッフへの手術説明にも用いた.
【結果】CT撮像から手術までの期間は13日~16カ月(中央値5ヵ月)で,2例が1カ月以内に手術を受けた.全例模型による手術プランニングが可能で,実際に予定どおりの手術を施行したが,DORV/PAの1例では模型で再現しえなかった異常筋束を原因とする遺残VSD短絡のため,再手術を要した.
【考察と結論】透明シリコーン製中空立体心臓模型は,手に取りあらゆる角度から,また任意の切開部から観察することができる.自験例で再現しえなかった異常筋束は,元のCT画像でも不明瞭であった.CT撮像から手術までの期間が10カ月と長かったこと,被曝線量低減のため心電図非同期で,呼吸抑制も行わなかったことが画像の質と模型の精度に影響したと考えられた.元のCT画像の精度がpitfallとなりうるが,模型は複雑ないし稀な形態を持つ心疾患の手術シミュレーションや患者/家族への説明に極めて有用である.