第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

外科治療

一般口演34(III-OR34)
外科治療 3

2018年7月7日(土) 10:00 〜 10:50 第4会場 (303)

座長:岡 徳彦(群馬県立小児医療センター 心臓血管外科)
座長:芳村 直樹(富山大学医学部 第1外科)

[III-OR34-04] 下大静脈が心尖部と同側にある単心室に対するTCPC手術

池田 義1, 井出 雄二郎1, 馬場 志郎2, 平田 拓也2, 赤木 健太郎2, 松田 浩一2, 湊谷 謙司1 (1.京都大学 大学院医学研究科 心臓血管外科, 2.京都大学 大学院医学研究科 発達小児科学)

キーワード:TCPC, apico-caval juxtaposition, フォンタン手術

下大静脈(IVC)が心尖部と同側にあるapico-caval juxtaposition (ACJ)を伴う単心室ではTCPC時に心房内導管、心外導管(心尖部と同側/逆側)のいずれを選択するか考慮を要する。われわれは肺静脈還流が正常な二心房症例に対しては、IVC側の肺静脈と心房間(Waterstone’s groove)を心房中隔ぎりぎりまで剥離し、心室の背側にIVCから肺動脈に向けて直線的な心外導管を置く方針としている。本法により心房内導管とほぼ同じ走行の導管を心外に留置することが可能である。今回術後CT画像の所見から、術前CTにて本法の可否および留置可能な人工血管径を示す指標について検討した。【対象・方法】当科でTCPCを施行したACJを伴う単心室 4例。年齢は平均2.6±0.5歳、体重は平均12.5±0.7kg。全例両方向性グレン手術後で、上大静脈(SVC)はIVCと同側3例、両側1例であった。全例でIVCから肺動脈に直線的な心外導管(ePTFE 16mm 3例、18mm 1例)を留置可能であった。術前後のCT画像を比較し本法を行うための必要条件を検討した。【結果】全例術後経過は良好であった。術後1年の心カテ(n=3)でSVC圧とIVC圧に差はなかった。術後CT画像において心外導管は心房壁を圧排してWaterston’s grooveとAV groove間に納まり、肺静脈や心室の圧迫を認めた症例はなかった。両groove間の距離 (Intergroove distance: IGD)が本法の可否に重要と考え、各症例の術前CT画像においてIGDを計測し、留置した人工血管径と比較した。人工血管径/IGDは0.82-0.99 (平均0.93±0.08)で、ほぼIGDに一致したサイズの人工血管が留置できていた。【考察・結語】直線的な心外導管は心血管を迂回した曲線的な導管と比べてエネルギーロスが少なく、心房内導管と比べて心拍動下の手術が可能、手技的に容易、術後血栓塞栓症のリスク低減などの点で有利である。ACJを有する単心室において、術前CT画像におけるIGDが必要な人工血管径以上であれば、本法は有用な選択肢となりうる。