第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

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一般口演

その他

一般口演36(III-OR36)
その他

2018年7月7日(土) 13:00 〜 13:55 第4会場 (303)

座長:川崎 志保理(順天堂大学 心臓血管外科)
座長:橘 剛(北海道大学大学院医学研究科 循環器・呼吸器外科)

[III-OR36-01] 再生型組織修復材バイオシートの小児外科への応用をめざして:高圧系修復材の可能性

中山 泰秀, 古越 真耶, 巽 英介 (国立循環器病研究センター研究所 人工臓器部)

キーワード:再生医療, 修復材, バイオシート

【目的】我々が提唱する新組織工学技術である生体内組織形成術(IBTA)を用いると、鋳型を皮下に埋込むだけで、自己結合組織からなる自家移植用組織膜(バイオシート)を作製することができる。一方、ウシやブタの心膜は組織修復材として市販されているが、適用は右心系に限られる。また、ePTFE膜などの人工物では劣化が起こり、遠隔期において石灰化などの問題を生じやすい。高圧系でも安心して使用できる再生可能な組織修復材があれば小児外科の治療の質の向上が期待される。本研究では、バイオシートを初めて大動脈の修復材として応用し、その生体内での機能性、耐久性、再生能を調べた。
【方法と結果】シリコーン製心棒(外径18mm)をスリット孔付のステンレス鋼製パイプ(内径20mm)で覆って鋳型を組み立てた。これをビーグル犬の皮下に2カ月間埋め込んで摘出した。鋳型の部材を全て取り外して得た結合組織管を切り開くことで、厚さ約1mm、大きさ7cm x 5cmのバイオシートを調製し、アルコール中で保存した。ビーグル犬を左開胸し、下行大動脈を露出させ、パーシャルクランプ下で楕円形の欠損口(約10mm x 5mm)を作製し、同形状に切り出したバイオシートを6-0 ナイロン糸を用いて連続縫合によってパッチ移植した。バイオシートは操作時にカッティングすることなく強固であった。縫着部からの出血は容易に止血が可能で、バイオシートと動脈との密着性は良好であった。術後抗血小板薬を1ヶ月投与した。血管造影撮影において、術直後より血栓形成を認めず、1ヶ月間膨化や狭窄無く、スムーズな血流を維持した。現在観察を継続して長期での耐久性を調べると共に組織観察による再生能の評価を行っている。
【結語】未だ急性期の段階であるが、本研究で初めてバイオシートが高圧系に耐えうる修復材としての可能性を得ることができた。今後観察期間の延長とともに例数を増やし信頼性の獲得をめざす。