第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

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一般口演

その他

一般口演36(III-OR36)
その他

2018年7月7日(土) 13:00 〜 13:55 第4会場 (303)

座長:川崎 志保理(順天堂大学 心臓血管外科)
座長:橘 剛(北海道大学大学院医学研究科 循環器・呼吸器外科)

[III-OR36-02] 原子間力顕微鏡を用いた肺動脈性肺高血圧症における肺動脈平滑筋細胞のレオロジー解析

桂木 慎一1, 石田 秀和1, 辰巳 奈央2, 成田 淳1, 岡嶋 孝治2, 小垣 滋豊1, 大薗 恵一1 (1.大阪大学大学院医学系研究科 小児科学, 2.北海道大学大学院 情報科学研究科 生命人間情報科学)

キーワード:肺動脈性肺高血圧症, 原子間力顕微鏡, 肺動脈平滑筋細胞

【背景】肺動脈性肺高血圧症(PAH)の主病態は肺末梢動脈のリモデリングによる肺血管抵抗と肺動脈圧の上昇とされてきたが、近位部肺動脈の血管キャパシタンスがPAHの予後に影響することが近年報告されている。我々は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて細胞のレオロジーを精密に測定する方法を確立しており、本研究ではPAH患者の主肺動脈由来の平滑筋細胞(PASMCs)の弾性(「硬さ」)を測定し、さらに肺高血圧症治療薬で弾性に変化が生じるか検討した。
【方法】PAHによってPASMCに生じる変化を評価するため、当院で脳死両側肺移植を行ったPAH患児の主肺動脈から採取したPASMCs(PAH-PASMCs)と非PAH患者から採取したPASMCs(N-PASMCs)の弾性率をAFMで測定し、その分布を数学的に解析した。また、既存の肺高血圧症治療薬がこれら二種のPASMCsの弾性に及ぼす影響を評価するため、sildenafil、riociguat、macitentanをPASMCsに添加した後にAFMで弾性率を測定し、弾性率分布の変化を解析した。
【結果】N-PASMCsの弾性率分布は一つの標準分布で近似されたが、PAH-PASMCsの弾性率は二峰性の分布を示し、二つの標準分布の和として近似された。また、sildenafilを添加したところ、N-PASMCs の弾性率分布に変化は認められなかったが、PAH-PASMCsでは二峰性分布のうち弾性率の高い群の細胞の割合が減少した。さらに、RiociguatやMacitentanを一定の濃度で添加すると、PAH-PASMCsでのみ弾性率の幾何平均は有意に低下した。
【結語】PAH患者の平滑筋細胞には正常よりも硬い群が存在し、主肺動脈の弾性率変化がPAH治療の標的になりうる可能性が示唆された。