第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演(多領域専門職部門)

移行期支援

一般口演(多領域専門職部門)06(III-TR06)
移行期支援

2018年7月7日(土) 09:10 〜 10:00 第6会場 (411+412)

座長:青木 雅子(東京女子医科大学 看護学部)
座長:栗田 直央子(静岡県立こども病院 看護部)

[III-TR06-05] 成人先天性心疾患患者の就業状況とその背景要因

榎本 淳子1,2, 水野 芳子2 (1.東洋大学文学部, 2.千葉県循環器病センター)

キーワード:先天性心疾患, 成人, 就業

【背景】先天性心疾患患者の多くが成人期に達することが可能となり、現在、患者の成熟、自立を包含した成人期への包括的な支援が模索されている。特に就業は成人患者にとって大きな課題であり、患者の自立のあり方を考える上でもその現状を把握することは重要である。【目的】成人先天性心疾患患者(ACHD)の就業状況とその状況に影響を及ぼす要因を検討する。【方法】ACHD患者193名(年齢20-59歳:学生は除く)に、1) 就業状況、2) 社会的属性(婚姻状態、教育歴、疾患重症度)3) QOL、4) 生活満足度、5) 疾患認識度を問う質問紙調査を実施した。【結果】就業状況として、男性患者89名中13名(14.6%)、女性患者104名中13名(12.5%)が就業していない状況(未就業)で、これは国勢調査より抽出した同性代の成人と比較して有意に高い値(国勢調査値:男性5%、女性2.9%)であった。なお、仕事への疾患の影響を問うた質問で、未就業患者が「(疾患のため)仕事ができない」と回答したのは、男女で1名ずつだった。未就業の背景要因を明らかにするためにロジスティック回帰分析を行ったところ、その状況に影響を及ぼしていたのは、男性は年齢が若いこと、女性は疾患重症度が高いことであった。また疾患認識度の得点について分散分析をしたところ、男女とも未就業患者は常勤の患者と比較して疾患の影響を受け、疾患のコントロールができていないことが明らかとなった。さらに未就業患者はQOL、生活満足度ともに低く、就業してないことが患者の生活にマイナスの影響を及ぼしていた。【考察・結論】患者は同世代の成人と比較して就業していない割合が高く、またその状況にある患者はQOL、生活満足度ともに低いことが明らかとなった。何らかの形で社会と接点を持つ(就業する)ことが成人患者の生活の質を考える上で重要であり、今後は若い患者への就業支援や疾患の影響をうまくコントロールする支援を考えることが必要である。