[P15-01] 両方向性グレン術後における体肺側副血行路発達の危険因子
キーワード:BDG, APC, アスピリン
【背景】体肺側副血行路(APC)はフォンタン循環において容量負荷をもたらし、更に肺循環に競合的に働くことで肺動脈圧を上昇させる恐れがあると考えられている。またAPCが両方向性グレン(BDG)術後に急速に発達する症例をしばしば経験する。【目的】BDG術後症例においてAPCを発達させる危険因子を明らかにする。【方法】当院で2007年から2017年にBDG術ならびに術前後に心臓カテーテル検査を施行した56例を対象とした。APCの定量的評価は、BDG術後カテーテル検査入院中に肺血流シンチグラフィ検査を施行、2つの結果を組み合わせFickの変法により算出したAPC流量(Qc)を用いた(Inuzuka R et al. Cardiol Young 2008)。このQcと原疾患、BDG術前の手術介入、BDG術後の治療と臨床経過、BDG術前後のカテーテル検査結果との関連を後方視的に検討した。【結果】対象症例のQcは1.7±0.5 L/min/m2だった。単変量解析ではfirst palliationにて側開胸施行(p=0.03)、シルデナフィル・ボセンタンの内服(p=0.03)、利尿剤の非内服(p=0.04)、アスピリンの非内服(p=0.01)、BDG術後の上大静脈圧(p=0.03)、BDG術後の大動脈血酸素飽和度(R=0.35, p=0.008)、BDG術後の肺動脈血酸素飽和度(R=0.29, p=0.03)との相関を認めた。ステップワイズ法を用いた多変量解析ではシルデナフィル・ボセンタンの内服(p=0.01)とアスピリンの非内服(p=0.009)がAPC発達に寄与する独立した危険因子であった。【結語】PDE5阻害薬、エンドセリン受容体阻害薬やアスピリンはBDG術後のAPC発達に影響を及ぼす可能性が示唆された。BDG術後症例に対する上記薬剤の長期使用の功罪について更なる大規模な検討が必要と思われる。