第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

周産期・心疾患合併妊婦

ポスターセッション23(P23)
周産期・心疾患合併妊婦 2

2018年7月6日(金) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:上野 健太郎(鹿児島大学病院 小児診療センター)

[P23-05] 児が母児間輸血症候群のために重症貧血となった川崎病後巨大冠動脈瘤症例

沼野 藤人, 堀口 祥, 塚田 正範, 小澤 淳一, 星名 哲, 齋藤 昭彦 (新潟大学医歯学総合研究科 小児科学分野)

キーワード:川崎病後遺症合併妊娠, 抗凝固療法, 胎児仮死

【背景】巨大冠動脈瘤(GA)を合併した女性は成人期には妊娠・分娩という問題に直面する。妊娠中は凝固能が亢進するため、中期以降には抗凝固薬の併用が検討されるが、その明確な使用指針はない。今回、GA合併症例に妊娠中期よりワーファリンを併用したところ、児が母児間輸血症候群(fetomaternal transfusion syndrome;以下FMT)のために重症貧血を来した母児例を経験したので報告する。【症例】26歳女性。5歳時に川崎病に罹患し、左冠動脈主幹部に10mmのGAを合併した。心筋虚血を認めず抗血小板薬2剤にて経過観察されていた。妊娠25週よりワーファリンの内服を追加し、妊娠36週よりヘパリン置換を行う予定であった。妊婦健診では胎児仮死兆候なく、妊娠35週2日では胎動は確認されていた。しかし妊娠35週6日に胎動の消失を自覚し緊急入院した。胎児超音波所見から高度の胎児貧血が疑われた。ワーファリン併用下での胎児高度貧血であったことと胎児仮死兆候が急速に出現したことから、胎児重症出血が疑われて緊急帝王切開となった。児のAPGAR scoreは2/2(1分/5分)と重症新生児仮死であり、皮膚色は蒼白でHb 3.2g/dlと高度の貧血を認めたが頭蓋・胸腔・腹腔内に出血を認めなかった。母体のHbF 6.0%、AFP 19183ng/mlは高値でありFMTと診断した。児に対しては輸血を行い、後遺症なく退院した。【考察】ワーファリンは胎盤通過性があり、妊娠母体に対する投与は胎児出血のリスクがある。本症例では胎児出血兆候に留意して経過観察されていたが、胎児仮死兆候と胎児重症貧血が急速に出現し、胎児出血が強く疑われたものの胎児に出血はなくFMTであることが判明した。抗凝固療法によりFMTとなった報告はなく、本症例でも経過や胎盤病理所見からはFMTとワーファリン投与の関連は証明できなかったが、GA合併母体に対するワーファリン投与が適切な管理であったかを検証すべく報告する。