[P37-05] TOF術後PSおよびPRの右室収縮能への影響~生理学的見地からの再手術適応基準の考察~
キーワード:ファロー四徴症, Anrep効果, 肺動脈弁閉鎖不全
ファロー四徴症根治術後の右室流出路への再介入は、肺動脈狭窄(PS)では右室圧(RVP)によって、また肺動脈弁閉鎖不全(PR)ではMRIによる逆流率および右室拡大の程度によって検討されることが多い。一方で適度なPSはPRによる右室拡大に対して保護的に働くことが示されている。PSおよびPRによる右室収縮能への影響を検討した。当院でフォロー中のファロー四徴症根治術後症例24例の内、心エコーでPR<中等度かつRVP/LVP<0.80のN群(n=15)、PR<中等度かつRVP/LVP>0.80の高度PS群(n=3)、PR>中等度かつMRIで逆流率≧20%の症例(PR群、n=7)について心臓カテーテルで得られたRVPとRV-dp/dt maxの関係を検討した。N群、PR群ではRVPとRV-dp/dt maxの間には良好な正の直線関係を認めた(それぞれp<0.001、r=0.91、p=0.005、r=0.91)。しかし高度PS群ではRV-dp/dt maxの上昇は充分でなくN群の回帰直線の下方に位置し、PR群の回帰直線はN群に比べて傾きが低かった(p<0.001)。N群におけるRVPとRV-dp/dt maxの間の正の直線関係はPSによるRVP上昇によって代償性にRV収縮能が増強されているが(Anrep効果)、高度PS症例での代償は不充分である。一方、PRはこのAnrep効果を減弱するように働き、PS単独の場合に比べて、右室収縮能に直接的な悪影響を与えていることが示唆された。適度なPSはAnrep効果によって右室収縮能を増強する。このafterload-contractility relationshipからの逸脱は高度PSおよびPRによる右心不全の早期認識、再手術適応判定に有用である可能性がある。RV-dp/dt maxが心エコーによっても測定できるため、臨床的有用性が期待できる。