第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスターセッション50(P50)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 3

2018年7月7日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:梶野 浩樹(網走厚生病院 小児科)

[P50-01] Epoprostenol持続静注療法導入5年後に甲状腺機能亢進症を認めたPA/VSD, MAPCAの術後肺動脈性肺高血圧例

美野 陽一, 橋田 祐一郎, 上桝 仁志, 坂田 晋史 (鳥取大学 医学部 周産期小児医学分野)

キーワード:Epoprostenol持続静注, 術後肺高血圧, 甲状腺機能亢進症

【背景】肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対するEpoprostenol持続静注(EPO)療法は1999年に本邦でも認可され,長期予後は大きく改善した。先天性心疾患に伴うPAHや術後肺高血圧(p-ICR PH)に対しては、NYHA/WHO III~IV度においてもEPO療法は考慮されている。今回我々はEPO療法導入5年後に甲状腺機能亢進症を合併したp-ICR PH症例を経験した。【症例】17歳女子。PA/VSD, MAPCA、22q11.2欠失症候群。1歳でUnifocalization施行、2歳でRastelliが施行された。4歳時にはPAp70/15(32)mmHg、Pp/Ps=0.91、Rp 5.6unit・m2とp-ICR PHを認めたため、ボセンタン水和物、ベラプロストナトリウム、シルデナフィルが漸次導入された。12歳時には PAp100/15(47)mmHg、Pp/Ps=0.95、Rp 8.6unit・m2と改善は得られず、PGI2負荷試験に最も反応性を認めたためEPO療法が導入された。EPO導入後はNYHA/WHO III→IIと改善傾向にあり外来管理も可能となった。17歳時に心不全症状増悪で入院、食欲不振による体重減少と間欠的な頻脈を認めた。β blocker投与により頻脈は改善傾向にあったが、心不全症状の改善には至らなかった。採血にてTSH 0.008μIU/mL、fT4 4.78ng/dLと甲状腺機能亢進症を認めた。TRAb 2.4IU/L(>2.0)、TSAb 152%(>120%)、抗TPO抗体 256IU/mL(>16)とBasedow病を疑う所見であった。チアマゾール、レボチロキシン投与により甲状腺機能亢進は改善、心不全症状も緩徐に軽快した。【考察】PAH患者では高率に甲状腺疾患を合併することが知られており、EPO使用との関連も近年指摘されている。MAPCAに対するEPO療法の有用性は明らかではないが、本症例では導入後のADLは向上しており一定の効果を認めた。EPO投与量や投与期間との明確な関連性もなく、症状は甲状腺機能亢進や低下など様々とされる。時に甲状腺機能亢進症は心不全増悪要因にもなりうるため、EPO療法中は定期的な甲状腺機能のチェックが必要である。