第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

川崎病・冠動脈・血管

ポスターセッション52(P52)
川崎病・冠動脈・血管 3

2018年7月7日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:水野 将徳(聖マリアンナ医科大学 小児科)

[P52-02] 心雑音を契機に診断した右冠動脈左室瘻の1例

下園 翼, 塩川 直宏, 高橋 宣宏, 中江 広治, 森田 康子, 櫨木 大祐, 上野 健太郎, 緒方 裕樹, 松葉 智之, 井本 浩 (鹿児島大学病院小児診療センター)

キーワード:冠動脈瘻, 先天性心疾患, 心筋シンチグラフィー

【背景】冠動脈瘻は稀な疾患であり小児期には無症状であることが多いが、放置した場合に虚血心不全の急性増悪を合併し突然死の危険因子となりうる。心雑音を契機に右冠動脈左室瘻と診断し、虚血所見から早期に瘻孔閉鎖術を行った乳児例を経験した。【症例】1か月の男児。胎児期に異常の指摘はなかった。在胎39週6日、正常経腟分娩、2648 gで出生(APS 9/9)した。日齢2より産院で心雑音を聴取し、近医総合病院小児科を紹介受診した。心臓超音波検査で左心系の拡大および右冠動脈全体の拡大(5.5mm)を認め、冠動脈瘻が疑われた。1か月時に当科を紹介受診した。聴診で軽度の拡張期雑音を聴取し、心電図ではV2-4でのST低下、心臓超音波検査及び心臓カテーテル検査を行い右冠動脈左室瘻と診断した。左室への瘻孔以遠で正常冠動脈と思われる血管が造影され、左冠動脈は前下降枝・回旋枝ともに正常であった。心筋シンチグラフィー(I-123 BMIPP、タリウム)では中隔から心尖にかけての虚血所見を認めた。虚血に伴う突然死の危険性があり瘻孔閉鎖の適応と判断し、3か月時に瘻孔閉鎖術(右冠動脈の左室流入部近傍を結紮)を行なった。術後の心筋シンチグラフィーで虚血所見は改善し、右冠動脈も開口部3.7mmと徐々に縮小傾向を認め遺残短絡血流は認めなかった。外来でアスピリン内服を継続して経過観察中である。【考察】冠動脈瘻の治療方針として、虚血所見や不整脈・収縮低下などの心機能障害を伴う症例は瘻孔閉鎖が推奨されている。本症例は明確な虚血所見があり、突然死の危険性もあるため乳児期早期の瘻孔閉鎖が必要と判断した。治療法選択に関しては手術やコイル塞栓など症例に応じて選択するが、本症例は瘻孔が大きく体格が小さいこともあり、カテーテル治療ではなく手術を選択した。【結語】心雑音を契機に診断した右冠動脈左室瘻の乳児に対し、瘻孔閉鎖術を行った。術後はアスピリン内服で血栓形成なく経過している。