第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

術後遠隔期・合併症・発達

一般口演1(I-OR01)
術後遠隔期・合併症・発達 1

2019年6月27日(木) 14:50 〜 15:40 第3会場 (大ホールC)

座長:村上 智明(札幌徳洲会病院 小児科)
座長:富松 宏文(東京女子医科大学 循環器小児科)

[I-OR01-05] フォンタン型手術後患者の思春期心理特性

城戸 佐知子, 小川 禎治, 田中 敏克, 富永 健太, 亀井 直哉, 松岡 道生, 三木 康暢 (兵庫県立こども病院 循環器内科)

キーワード:思春期患者, フォンタン型手術後, 心理特性

先天性心疾患患者は思春期・成長期に、様々な心理的問題を抱えることが知られている。この傾向は複雑心奇形においてはより顕著であり、日常診療の中で放置できない問題となっている。そこで、診療における注意点を明らかにするために、複雑心奇形の中でフォンタン型手術患後患者の心理的傾向・特性を抽出し検討した。対象は、当院外来通院中の中学生以上のフォンタン型手術後患者109名(中学生・高校生43名、高校卒業後66名)、男性63名・女性46名で、カルテから後方視的に、主として思春期(中学~高校生)の頃の言動について調査した。このうち、知的障害・発達障害の患者が25名(うちダウン症候群を含む意思疎通困難な患者3名)、自死が2名(中学生と大学生)あった。不登校・引きこもり・パニック障害など、精神的・心理的なトラブルを抱えていた患者は12名であった。ほとんどの患者が中学生頃には症状を訴えていたが、成人期にも社会参加できないままであったのは3名のみであった。head up tilt testを試行した患者が12名あった。起立性調節障害様症状の訴えは著明であるが、検査結果は起立直後性低血圧、体位性起立性頻脈症候群、血管迷走神経性反射などいずれも軽微な者が多く、特に治療を必要とするものはなかった。一方で、負けず嫌いで、健常者と同じように出来ないことに納得がいかず、自分の身体の状態を越えて無理をしている者は15名にのぼり、運動中の体調不良の結果、救急搬送された患者もあった。「後輩患者に希望を持ってもらえるように頑張りたい」「せっかくの命だから無理をしてでも社会貢献したい」など使命感を口にする者もいた。思春期には自己否定の裏返しとして、無理をして健常者に合わせようとする傾向が強く、身体表現となることも多い。中には生命的危機に繋がることもあり、思春期の患者では病状が安定していても、特に注意して日常生活の状況を聞き出すようにする必要がある。