第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

外科治療

ポスターセッション28(I-P28)
外科治療 3

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:新川 武史(東京女子医科大学 心臓血管外科)

[I-P28-05] 肺動脈スリング(左肺動脈右肺動脈起始)の治療経験

野間 美緒1, 平野 暁教1, 山本 裕介1, 吉村 幸浩1, 寺田 正次1, 永峰 宏樹2, 住友 直文2, 宮田 功一2, 福島 直哉2, 大木 寛生2, 三浦 大2 (1.東京都立小児総合医療センター 心臓血管外科, 2.東京都立小児総合医療センター 循環器科)

キーワード:肺動脈スリング, 気管狭窄, 末梢性肺動脈狭窄

【はじめに】肺動脈スリング(PAS)は、左原始肺動脈が閉塞し、左肺動脈と右原始肺動脈間に側副血行路を生じることにより形成される。この左肺動脈により右気管支と気管下部が圧迫され狭窄症状が出現する。【目的】当院におけるPASに対する治療の現状を評価、課題を明らかにする。【対象と方法】2010年~2018年に、当院で外科治療を行ったPAS 26例について、診療録より後方視的に調査した。【結果】男児16女児10例。手術時年齢・体重は5.6ヵ月・6.1kg(中央値、以下同)。主症状は喘鳴や呼吸障害で、挿管既往ありが18例、このうちCPRを要したものが4(うちECPR1)例。合併心疾患はASD7、TOF3、VSD2、PDA2、CoA1、PAPVC1例。PLSVC17例。心外奇形ではVACTER(椎肛心気食腎)症候群7例。術前CT検査は全例で施行。術式は左肺動脈のre-implantation。手術適応のある気管狭窄(CTS)の合併が22例あり、小児外科医によるsliding気管形成術施行。21例がPASとCTSの同時手術で、手術時間は10時間。術中CPBから離脱できずに術後ECMOとなったものが6例。24例で抜管し、挿管期間は11日、術後入院期間は63日。術後観察期間は4.3年(94日~8.6年)、片側・両側の肺動脈狭窄に対するカテーテル拡大術を繰り返すものが7例、肺動脈形成術が2例。手術後30日以内、遠隔期死亡が各1例。【まとめ】PASの治療はCTSの治療と切り離すことができず多大な労力と時間を要するが、循環器科、心臓血管外科、小児外科、集中治療科各科の連携により当院での治療成績は良好であった。左肺動脈吻合部術式の工夫により、近年の症例は左肺動脈への術後介入の必要性が減少した。左肺動脈の低形成のみならず、右気管支の狭窄や軟化症、それに伴う右肺や右肺動脈の低形成などにより右肺血流低下が認められることもあり、症例ごとに左右バランスのとれた肺血流確保に留意することが重要であると考えた。