第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

外科治療

ポスターセッション29(I-P29)
外科治療 4

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:橘 剛(神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科)

[I-P29-02] バルーン裂開術後の大動脈弁逆流に対する「裂開部の縫合再建を含む自己弁温存術式」による再介入を行った重症大動脈弁狭窄の経験

河田 政明, 吉積 功, 鵜垣 伸也 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児・先天性心臓血管外科)

キーワード:重症大動脈弁狭窄, バルーン大動脈弁裂開術, 大動脈弁形成

【はじめに】重症大動脈弁狭窄に対する経カテーテル的大動脈弁裂開術は状態不良例に対する救命的処置としての役割は重要である。しかしながら異形成の著明な弁尖に対する盲目的な処置は時に重篤な後遺症を生じ得る。カテーテル治療後早期・中期遠隔期に裂開部修復を含む外科的再介入の適応となった3例を経験した。【対象と手術】症例1・症例2:乳児期早期から中等度の大動脈弁逆流の発生が見られた男児。9歳・8歳時には逆流の増悪から運動制限を要した。運動の希望が強く、弁輪低形成のため裂開・逸脱した弁尖の縫合再建と癒合した交連の切開を行った。症例3:合併した大動脈弁上部狭窄、残存した狭窄、逆流の発生に対し生後1か月時に離断した弁尖再縫合、交連切開、異形成結節組織摘除を行い、大動脈弁上部狭窄をパッチ拡大した。【結果】いずれも軽度の大動脈弁狭窄(圧較差20~30mmHg)兼逆流(軽度以下)となり、抗凝固、運動制限なく経過観察可能となった。乳児例は発育の改善が見られた。【考察とまとめ】カテーテルによる新生児期大動脈弁裂開術は胎児期からの左室機能不全など状態不良例に対し、侵襲を最低限にとどめ救命的意義は大きいが形態異常や異形成の強い弁ではしばしば狭窄の残存や、想定された交連部以外での弁尖裂開、それに引き続く逆流の増大を生じる危険性がある。追加・対応する外科術式としては再弁切開・Ross-Konno手術、今野手術などさまざまな手技があるが、過大な手術侵襲、不明な長期予後、煩雑な抗凝固療法など問題点も多い。“弁尖再縫合+直視下弁切開”を含む形成術式も小児期人工弁置換や煩雑な小児期抗凝固療法を回避するための重要な選択肢となる。