[I-P32-01] 新生児遷延性肺高血圧を合併したI型完全大血管転位の一例
キーワード:完全大血管転位, 新生児遷延性肺高血圧, 原発性肺低形成
【背景】完全大血管転位(TGA)I型の一部の症例に新生児遷延性肺高血圧(PPHN)を合併し、バルーン心房中隔裂開術(BAS)後も酸素化が改善せず管理に難渋することがある。
【症例】在胎42週0日, 出生体重3278g, 分娩進行停止による緊急帝王切開分娩で出生した。Apgar Scoreは6(1分値)/8(5分値)点。出生後TGA(I型)と診断された。出生時下肢SpO2 60-70% (経鼻酸素 5L/min投与下)と上昇せず。日齢0にBAS施行後も挿管・純酸素投与下SpO2 (上肢) 45%, (下肢) 74%と低酸素血症が遷延し、動脈管も右左シャントが優位でPPHN合併と診断した。日齢1よりPGE1製剤に加えBosentan, 一酸化窒素吸入療法を開始したが高肺血管抵抗による低肺血流状態が続いた。日齢4よりEpoprostenolを開始し漸増したところ日齢10にようやく安定した管理が可能となったが日齢11に突如胸写上びまん性すりガラス影と肺出血を来たし、急激に換気不全が進行し日齢12に永眠した。肺病理の結果、肺血管構造に異常は認めなかったものの肺血管床の低形成とびまん性肺胞障害を認めた。
【考察】重度PPHN合併TGA症例の肺血管病理について、肺血管床の低形成という報告はない。一方,新生児遷延性肺高血圧発症の病態生理として,肺実質病変や肺血管肥厚・攣縮のほかに肺血管床の低形成も知られている。本症例における肺血管床低形成の機序は不明だが,原発性肺低形成という概念があり,物理的な圧排がなくとも羊水過小やGrowth factorの発現低下も一因となりうることが知られている。積極的な内科的治療に反応しないTGA I型+PPHN症例に対してはECMO導入や救命的な外科的介入も検討されるが,本症例のように不可逆的病態が背景にある場合には外科的治療の効果は不透明であり,治療はさらに困難であることが予測される。
【結語】PPHNを合併したTGA I型の中には内科的治療不応の予後不良群が存在する。一部は肺血管床の低形成に起因している場合がある。
【症例】在胎42週0日, 出生体重3278g, 分娩進行停止による緊急帝王切開分娩で出生した。Apgar Scoreは6(1分値)/8(5分値)点。出生後TGA(I型)と診断された。出生時下肢SpO2 60-70% (経鼻酸素 5L/min投与下)と上昇せず。日齢0にBAS施行後も挿管・純酸素投与下SpO2 (上肢) 45%, (下肢) 74%と低酸素血症が遷延し、動脈管も右左シャントが優位でPPHN合併と診断した。日齢1よりPGE1製剤に加えBosentan, 一酸化窒素吸入療法を開始したが高肺血管抵抗による低肺血流状態が続いた。日齢4よりEpoprostenolを開始し漸増したところ日齢10にようやく安定した管理が可能となったが日齢11に突如胸写上びまん性すりガラス影と肺出血を来たし、急激に換気不全が進行し日齢12に永眠した。肺病理の結果、肺血管構造に異常は認めなかったものの肺血管床の低形成とびまん性肺胞障害を認めた。
【考察】重度PPHN合併TGA症例の肺血管病理について、肺血管床の低形成という報告はない。一方,新生児遷延性肺高血圧発症の病態生理として,肺実質病変や肺血管肥厚・攣縮のほかに肺血管床の低形成も知られている。本症例における肺血管床低形成の機序は不明だが,原発性肺低形成という概念があり,物理的な圧排がなくとも羊水過小やGrowth factorの発現低下も一因となりうることが知られている。積極的な内科的治療に反応しないTGA I型+PPHN症例に対してはECMO導入や救命的な外科的介入も検討されるが,本症例のように不可逆的病態が背景にある場合には外科的治療の効果は不透明であり,治療はさらに困難であることが予測される。
【結語】PPHNを合併したTGA I型の中には内科的治療不応の予後不良群が存在する。一部は肺血管床の低形成に起因している場合がある。