第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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その他

ポスターセッション35(I-P35)
その他 1

2019年6月27日(木) 17:40 〜 18:40 ポスター会場 (大ホールB)

座長:濱田 洋通(東京女子医科大学八千代医療センター 小児科)

[I-P35-01] 川崎病後の冠動脈瘤・腹部大動脈瘤に対するwarfarin加療中に発症した咽頭後部血腫の一例、抗凝固治療の稀な合併症として

安藤 達也, 飯島 正紀, 森 琢麿, 石川 悟, 古河 賢太郎, 吉田 賢司, 藤原 優子 (東京慈恵会医科大学 小児科)

キーワード:ワーファリン, 咽頭後部血腫, 気道閉塞

【背景】warfarin内服に伴う出血性合併症は多岐にわたるが、まれな合併症として咽頭後部血腫がある。過去に10例の報告が散見されるが平均年齢は60歳で高齢者に多く未成年での報告はみられない。今回、川崎病に伴う両側冠動脈瘤、腹部大動脈瘤に対するwarfarinと抗血小板薬による加療中に発症した咽頭後部血腫の一例を経験したので報告する。【症例】18歳男児、乳児期に川崎病を発症しガンマグロブリン等による加療を受けたが両側冠動脈瘤と腹部大動脈瘤を合併し右冠動脈は完全閉塞、左冠動脈瘤と腹部大動脈瘤は残存し、以来warfarinの内服をしていた。腹痛を主訴に受診したが、より顕著であったのは左頸部の腫脹と嚥下困難に伴う流延で咽後膿瘍に類似する所見であった。CTにおいても咽頭後壁より咽頭腔に突出する腫瘤が描出され当初感染症を疑ったが、採血では炎症所見に乏しく一方でINRは9.1と上昇、血小板数は正常であったことからwarfarinによる凝固機能異常に惹起された咽頭後部血腫と診断した。気道確保を最優先に考え気管切開も準備の上で経口気管内挿管を施行した。同時にビタミンK投与により凝固機能の回復を図り、その後ヘパリン化を行った。凝固機能回復に伴い頸部腫脹は改善し5日後にCTと内視鏡で血腫が充分退縮したことを確認し抜管した。【考察】咽頭後部血腫は気道閉塞を起こしうる重篤な病態であり速やかな診断と対応が求められる。転倒、異物誤飲、激しい咳嗽などが誘因になることもあるが不明な場合も多い。本症例でも外的誘因ははっきりとしなかったがINRの延長が顕著であった。日頃は服薬コンプライアンスが悪くINRはむしろ治療域以下が多かったが服薬指導を受けコンスタントな内服を開始したことで極端にINRが延長したと考えられた。小児から成人への移行期においては本人への適切な患者教育を行うことが重要と再認識された。