第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション3(I-PD03)
新生児期からの肺高血圧を、どう捉え、どの段階で、どんな治療をすべきか?

2019年6月27日(木) 08:40 〜 10:10 第3会場 (大ホールC)

座長:土井 庄三郎(東京医科歯科大学大学院 小児・周産期地域医療学)
座長:与田 仁志(東邦大学医療センター大森病院 新生児科)
ディスカッサント:加藤 太一(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)
ディスカッサント:高月 晋一(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
ディスカッサント:澤田 博文(三重大学医学部小児科・麻酔集中治療学)
ディスカッサント:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)
ディスカッサント:福島 裕之(東京歯科大学市川総合病院 小児科)

[I-PD03-04] 新生児/小児肺高血圧症に対する幹細胞療法新生児/小児肺高血圧症に対する幹細胞療法

佐藤 義朗 (名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター 新生児部門)

キーワード:幹細胞療法, 再生医療, 肺高血圧症

新生児/小児の肺高血圧症(PH)は、右心不全につながり生命を脅かす重要な疾患である。現行のプロスタグランジン製剤、エンドセリン拮抗剤、ホスホジエステラーゼ5阻害薬などによる治療で一定の効果を認めるが、依然として死亡率は高い。PHは、血管内皮の傷害/機能不全から始まり、筋性動脈化、筋性動脈の中膜肥厚、内膜新生、叢状病変形成、微少血管床喪失と病変が進む。現行の薬剤治療は、血管に働く負の因子の調節により肺血管の内皮機能を回復させる作用が主であり、中膜肥厚の段階までは効果を期待できる。しかし、その後の内膜新生以降に進行したPH児には無効である。これが既存の治療法に充分な効果が得られない理由として考えられる。
PHに対する充分な治療手段を確立するために、私達は再生医療/幹細胞療法に注目した。幹細胞を用いた再生医療/細胞療法は、様々な臓器や疾患に対し研究され臨床応用されつつある。これまでの私達の新生児慢性肺疾患の動物モデルを用いた研究においても、幹細胞投与は、肺障害のみならず、CLDに伴うPHにも治療効果を認めることを明らかにしている。“再生”としての治療戦略は、血管内皮障害の修復以外に、肺の微小血管床の再生の可能性も有している。治療介入のタイミングも、PHの症状、進行を抑える働きに加え、修復、再生効果がある再生医療/幹細胞療法は、より遅いタイミングでも効果が期待できる。
上記幹細胞治療では、自家細胞投与ではなく、製剤化し他家細胞での投与も可能である。幹細胞の製剤化ができれば、特別な設備を持たない病院でも点滴投与での治療ができ、再生医療/幹細胞療法を一般医療にすることが可能となる。
本パネルディスカッションでは、私達のこれまでの研究結果を中心に、PHに対する幹細胞療法について概説する。