第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム4(I-S04)
心不全病態に対する多面的アプローチ 基礎から治療へ

2019年6月27日(木) 16:00 〜 17:30 第2会場 (大ホールA)

座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
座長:横山 詩子(東京医科大学 細胞生理学分野)

[I-S04-01] 非コードRNAの心不全における役割

尾野 亘 (京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)

キーワード:miRNA, lncRNA, heart failure

近年、ヒトゲノムの約3/4の領域はRNAに転写されていると報告されているが、それらの多くはタンパク質を作らない、ノンコーディングRNA(non-coding RNA, ncRNA)である。
このncRNAの中でmicroRNA (miRNA)は21から25塩基の短いRNAで、特異的な標的蛋白の翻訳抑制に働いている。miRNAの数は生物の複雑さと共に増加し、ヒトゲノムには約2500個のmiRNAが存在するとみられている。我々はSREBP-2遺伝子のイントロン16にあるmiR-33a欠損マウスを作成し、血中HDLコレステロールが著増し、動脈硬化の抑制、および炎症細胞浸潤の抑制が認められた。さらに圧負荷による心肥大、心不全モデルにおいては、miR-33aがない事が心臓の線維化を防ぐことを示した。これは細胞膜のコレステロール維持にmiR-33aが関与し、miR-33a欠損によりリピッドラフトが減少することが線維化を生じるシグナルを伝達させないためと考えられた。
一方、200塩基以上のlong ncRNA (lncRNA)にも重要な働きをするものが存在するはずである。マウス大動脈縮窄モデルの、心肥大、心不全心で高発現していたlong intergenic ncRNA(lincRNA)を同定し、心筋と骨格筋に特異的に発現する筋肉特異的なlincRNAの欠損マウスを作成し、心臓に圧負荷をかけたところ心不全を呈した。さらにこの筋特異的lincRNAが担う分子メカニズムの詳細についても概説したい。