第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム5(I-S05)
post tolvaptan eraのうっ血解除戦術〜利尿薬をどのように使うか

2019年6月27日(木) 10:20 〜 11:50 第3会場 (大ホールC)

座長:稲井 慶(東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)
座長:脇 研自(倉敷中央病院 小児科)

[I-S05-01] 腎保護戦略からみた体液管理

澤田 真理子 (倉敷中央病院 小児科)

キーワード:体液管理, 腎保護戦略, 利尿薬

心血管集中治療では、循環管理のみならず、複雑な病態と多臓器障害への包括的な管理を求められる。うっ血性心不全をきたす心疾患患者では、高い頻度で急性もしくは慢性腎機能低下を合併し、体液管理が困難である。さらに、心疾患患者において、腎不全は独立した予後因子であることが指摘されており、厳重な管理が必要不可欠である。特に、先天性心疾患を中心とした小児循環器疾患では、複雑な病態を呈し、かつ個別化された体液管理を要する。
体液管理の基本は、原因となっている要因を治療・管理し、酸塩基平衡や電解質異常の是正を通じた全身状態の安定化である。集中治療領域においては大規模臨床試験に基づくエビデンスが構築されている。小児の心・腎不全患者におけるエビデンスは少なく、臨床での活用はより困難である。体液過剰に対して、まずは種々の利尿薬等による薬物療法を行う。近年、トルバプタンの普及により、薬物療法を主体とした体液管理が容易となった。一方で、浮腫や肺水腫の症例であっても、血管内脱水を合併することがある。必要に応じて、輸血やアルブミン製剤などの投与、輸液負荷を行う。これらの薬物・輸液による治療に抵抗する場合は、遅滞なく持続的もしくは間欠的に体外限外濾過法・血液ろ過透析による除水および腎不全管理を行う。早期の限外濾過・持続ろ過透析による除水により、短期・長期予後の改善が期待されているが、結論は出ていない。バスキュラーアクセス確保が困難な場合や、血行動態が不安定な場合、腹膜透析による管理も考慮され得る。限外濾過胞・血液濾過透析および腹膜透析による除水を行う際は、血管内脱水に留意すべきである。
心・腎不全を合併した先天性心疾患症例の管理は、極めて難しい。小児循環科医・腎臓医らが連携・協働し、短期的・長期的予後の改善されることが望まれる。