第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

宮田賞受賞講演

宮田賞受賞講演(II-MPL)

2019年6月28日(金) 08:30 〜 09:30 第6会場 (小ホール)

座長:平松 祐司(筑波大学 心臓血管外科)

[II-MPL-01] 次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析による心筋緻密化障害の遺伝子診断と診療の拠点形成

廣野 恵一 (富山大学医学部 小児科)

キーワード:心筋緻密化障害, 遺伝学的検査, 診断拠点

【研究目的】
心筋緻密化障害は、心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を特徴とした心筋症で、難治性心不全や突然死の原因となる疾患であるが、その実態は明らかとなっていない。
 
【研究方法】
心筋緻密化障害の発症機構の解明するために、まず、心筋緻密化障害の臨床像を検討した。次に、心筋緻密化障害患者において、胎生期における心筋層の発達・成熟に関わる遺伝子異常の探索を行った。さらに、探索された遺伝子異常が心筋の発達・成熟に及ぼす影響を明らかにするために、患者iPS細胞由来心筋細胞を作製し、機能解析を行った。
 
【研究結果】
乳児例の大半は心不全を伴っていたが、幼児・学童例は半数が無症状であった。左室駆出率は乳児例で低値であった。左室後壁厚や左室駆出率のZ-scoreは左室駆出率と相関が見られた。左室後壁厚のZ-scoreは死亡および心移植のリスクファクターであることが示された。患者から採取した血液からベクターにより遺伝子導入しiPS細胞を作成し心筋細胞に分化させることができた。102人の心筋緻密化障害患者から39例の患者に16遺伝子から43の遺伝子変異を見いだした。そのうちの28変異は新規であった。サルコメア遺伝子の変異は63%、イオンチャネルに関連する遺伝子の変異は12%であった。MYH7とTAZ遺伝子の変異が最も多く見いだされた。また、興味深いことにMYH7とTAZの変異は異なる表現型を示した。遺伝子変異を有する群は若年発症と左室駆出率の低下の傾向を示した。生存解析では、遺伝子変異を有する数が多いほど予後不良であることが明らかとなった。
 
【今後の展望】
次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子検査を行うことで、心筋緻密化障害患者の遺伝子変異を明らかにした。今後のさらなる症例の蓄積により遺伝子型・表現型相関の解明が望まれる。