第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ミニシンポジウム

ミニシンポジウム1(II-MS01)
次世代育成プロジェクト3

2019年6月28日(金) 10:05 〜 11:20 第1会場 (特別会議場)

座長:安河内 聰(長野県立こども病院 循環器センター)
座長:芳村 直樹(富山大学 第1外科)

[II-MS01-05] 働き方改革と小児心臓血管外科次世代育成

坂本 喜三郎, 猪飼 秋夫, 廣瀬 圭一, 村田 眞哉, 菅野 勝義, 石道 基典, 腰山 宏, 渡辺 謙太郎, 太田 恵介 (静岡県立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:次世代育成, 先天性心臓外科, 働き方改革

日本の出生数は、1987年に第一次ベビーブームの半分:135万人を切ってから30年以上低下傾向が続き、2016年はついに100万人を割った。このボディーブローのような少子化の結果、未来の担い手である子供人口(14歳以下)は今年4月時点で人口の12.1%(1533万人:ピークの1954年は約35%、3000万人)で、人口が4000万人以上ある世界32カ国のなかで最低となったという(日本に次いで低い韓国が12.9%)。この少子化が日本の根幹を揺らしており、世界をリードしてきた医療の現場でも悪循環が始まっている。小児循環器領域はその影響を強く受けており、量を含む臨床経験の蓄積が質の維持に影響する比率が大きい外科系ではより深刻だ。
ここ10年間の先天性心疾患に対する年間手術件数は、9400件[人工心肺使用7000件]程度で、人口100万あたり75[56]件という計算(日本の総人口1億2500万)になる。都道府県別では人口150万以下(県内全ての症例を1施設に集約しても手術件数が100件に満たない)の県が半分あり、その地域を支えている中心的外科医の質の維持と次世代外科医の適切なトレーニングに必要な症例の確保が困難な現実に直面している。我々は、このタイミングで『働き方改革』という黒船と向き合うことになった。
私自身、肉体と精神の状態を良好に維持できるようにする働き方改革の推進という基本方針に異論はない。ただ同時に、“医療界、特に医師の働き方改革”を適正に進めるのは容易でないのは紛れもない事実である。この根本的背景には、今まで日本の医療を確率、成立させてきた“総労働時間調整という概念を持たなかった医師の働き方”がある。業務効率を改善することを前提にしても、総労働時間を3割、4割削減するには業務のなかの何を減らせば良いのだろうか。
本日は、“働き方改革を進めるなかで、最大公約数の外科医が許容できる集約化を如何に進めるべきか”の議論を推進する材料を提示することで任を果たしたい。