[II-OR25-03] 肺動脈絞扼術を先行した完全房室中隔欠損の術後成績の検討
キーワード:完全房室中隔欠損, 肺動脈絞扼術, 一期根治術
(目的)先行手術として肺動脈絞扼術(PAB)を施行した完全房室中隔欠損(cAVSD)症例の根治術(ICR)後まで含めた房室弁・心機能への影響について検討した。(方法)2006年3月から2018年3月までにcAVSDに対してICR施行した連続31例を、ICR前にPAB施行した10例(A群)と一期的ICR施行した21例(B群)の2群に分けて心機能、遠隔期成績について検討した。観察期間は平均59.5ヶ月。PABの適応として体重3.5kg以下、術前からのカテコラミンや利尿剤静注を要する心不全、合併心奇形症例とした。(結果) A群のPAB時の日齢、体重は29.9±19.3日、2.6±0.3kg。ICR時日齢は A, B群各々5.7±2.4、5.1±2.7ヶ月、体重は4.8±1.5、5.5±1.6kg。PAB施行理由は心不全7例、CoA repairとの併施3例。ICR前のLVEFは60.1±9.1, 69.2±6.9%(P=0.01)とB群が有意に高かった。ICR後房室弁狭窄の要因となる共通房室弁輪径(85.7±13.3, 88.4±7.7%ofN), LVEDV(150.0±21.5, 130.3± 31.6%ofN), 乳頭筋間距離(12.3±1.0, 14.1±0.8mm)はいずれも有意な差は認めず。A群のPAB後の死亡なし。ICR後入院死亡はB群の2名で、死因はPH crisisと、術後左側房室弁逆流に対する再手術後のLOSであった。再手術施行例は各group2名ずつで原因はA群がresidual VSDと左側房室弁逆流、B群が左側房室弁逆流と左側房室弁輪狭小だった。術直後の房室弁流速はAB群各々、左側1.3±0.1, 1.1±0.1右側1.2±0.1, 1.2±0.1m/sで群間に差は認めなかった。房室弁逆流はA群ではPAB時とICR前で有意差はないも減少(2.1±0.7, 1.7±1.0)を認め、ICR直後および一年後で左右共に逆流はAB群間で差は認めなかった。ICR1年後のLVEFは63.3±4.9, 67.3±6.7% (P=0.13)であった。(結語)新生児・乳児期早期の心不全・心奇形合併例においても、ICR時の形態、心機能やICR後の房室弁機能を含めた成績はPABによる影響を認めなかった。一期ICRのリスクが高い症例に今後も積極的にPABを行う方針である。