第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスターセッション

心筋・心膜疾患

ポスターセッション44(II-P44)
心筋・心膜疾患 4

Fri. Jun 28, 2019 5:30 PM - 6:30 PM ポスター会場 (大ホールB)

座長:藤原 優子(町田市民病院 小児科)

[II-P44-05] 特発性心膜炎の2例 ~心嚢液,血清のサイトカイン分析から病態の考察~

古田 貴士1, 大西 佑治1, 向野 文貴1,2, 岡田 清吾1, 安戸 裕貴1, 鈴木 康夫1, 長谷川 俊史1 (1.山口大学大学院医学系研究科 医学専攻小児科学講座, 2.鼓ヶ浦こども医療福祉センター 小児科)

Keywords:特発性心膜炎, サイトカイン, NSAIDs

【背景】急性心膜炎の発症率は全年齢層で年間100,000人あたり27.7とされる.治療の第一選択は非ステロイド系消炎鎮痛剤 (NSAIDs) とされ,無効例にはステロイドが使用される.NSAIDsへの反応性に影響する要因については,明らかになっていない.特発性心膜炎の2例を経験したため,本疾患の病態についてサイトカイン分析の結果に文献的考察を加えて報告する.【症例1】4か月男児.入院当日に前医で多呼吸を指摘され,当科に入院した.エコーで著明な心嚢液貯留を認め,心膜炎に伴う心タンポナーデと診断した.心嚢ドレーンを留置し,アスピリンを開始した.排液量が減少したため,入院4日目にドレーンを抜去したが,再度心嚢液貯留,CRP上昇を認めた.病勢がコントロールできていないと判断し,入院13日目にプレドニゾロンを開始した.投与開始後から心嚢液は減少し,入院24日目に消失した.【症例2】5歳男児.入院5日前から発熱が出現,前医で胸部レントゲン写真にて心拡大を指摘され,当科に入院した.エコーで心嚢液貯留を認め,心膜炎と診断した.アスピリン開始し,入院3日目に心嚢穿刺を施行した.心嚢穿刺後、病勢は改善し、入院17日目に心嚢液消失とCRP陰性化を確認した. 2名とも心嚢液細胞診およびウイルスPCRの結果から,特発性心膜炎と診断した.急性期の心嚢液および血清中サイトカイン濃度解析は以下の通りであった。症例1:IL-6 (心嚢液30,998.1 pg/ml,血清 23.1 pg/ml),IL-10 (心嚢液 14.3 pg/ml,血清 測定感度以下),症例2:IL-6 (心嚢液39,227.8 pg/ml,血清 78.5 pg/ml),IL-10 (心嚢液 66.6 pg/ml,血清 4.0 pg/ml).【考察】2名とも心嚢液IL-6濃度は、血清に比して著明に高値であり、局所の炎症を反映していると推測された. また症例2の心嚢液IL-10濃度は症例1より高値であり, 心嚢液中の抗炎症性サイトカイン濃度が治療反応性に影響した可能性が示唆された.