[II-P56-01] フォンタン関連肝疾患に合併した難治性腹水に対する外来での大量腹水穿刺の経験
キーワード:フォンタン関連肝疾患, 腹水穿刺, 成人先天性心疾患
【背景】フォンタン関連肝疾患(FALD)に合併する大量の難治性腹水は、患者のQOLを著しく低下させる。このため腹水穿刺が必要となるが、具体的な方法、循環動態への影響や合併症に関する報告はほとんどない。今回、本人の希望を尊重し、外来で定期的に大量腹水穿刺(LVP)を施行したFALDの成人例について検討し報告する。【目的】本例のLVPについて、その方法、vital sign、合併症を後方視的に検討した。【症例】27歳、女性。多脾症候群、単心室症、TCPC術後、21歳頃から腹水が出現し導管狭窄のため23歳時に再手術を受けた。しかし腹水貯留が増悪し、26歳時から定期的なLVPが必要になった。【方法】外来処置室で静脈ルート確保し輸液開始、maximal barrier precautionのもと透析用留置針17Gで腹壁穿刺、排液速度は約1L/時間とし肝硬変のLVPを参考に1回の排液量は約5Lを目安とした。穿刺前の検査結果に応じて、濃厚赤血球液、免疫グロブリン輸注を適宜行った。【結果】LVPの頻度は約4週毎で、計11回施行した。排液量は5L~7L/回であった。本例はpacemaker rhythm 70/分と心拍数一定で、全経過で血圧やSpO2の有意な変動はなかった。昇圧剤や予定外の輸液追加を要さず、出血や気分不良等による中断もなく、日勤時間内に帰宅可能であった。9回目施行1週間後にMRSA敗血症を発症、6週間の抗生剤投与で後遺症なく治癒したがLVPとの関連も否定できなかった。【考察】2018年、Rajpalらは32歳、Fontan術後例のLVP施行時の循環動態を報告した。開始後10分、1.5L排液でFontan圧低下、30分、5L排液で心拍出量が1.3倍になり、LVPはFontan循環にとって利点が大きいと考えられた。本症例もLVPを急性合併症なく外来で定期的に施行でき、QOLも改善した。しかし慢性期の循環動態、他臓器や予後への影響等は不明であり、重篤な感染症リスクもある。今後、FALDにおけるLVPについて、詳細な検討と方法の確立が必要であると考えられる。