第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム9(II-S09)
先天性心疾患の成人期再手術の実際と問題点(外科医の立場から)

2019年6月28日(金) 10:10 〜 11:40 第2会場 (大ホールA)

座長:藤原 慶一((元)兵庫県立尼崎総合医療センター 心臓血管外科)
座長:立野 滋(千葉県循環器病センター 小児科)

[II-S09-04] Fontan術後遠隔期の再手術:可及的良好な機能回復をめざす

松尾 浩三1, 椛沢 政司1, 立野 滋2, 川副 泰隆2, 岡嶋 良和2 (1.千葉県循環器病センター 心臓血管外科, 2.千葉県循環器病センター 小児科)

キーワード:Fontan operation, reoperation, FALD

1971年の”Surgical repair for tricuspid atresia”と題する論文以降、Fontan型手術は術式の変遷を経ながら適用症例が拡大されてきた。1970年代の術式は主として右房を直接肺動脈に結合するAtrio-pulmonary connecting Fontan(APC-Fontan)であったが1988年DeLevalらの提唱したSVCを離断して肺動脈に吻合するTotal cavo-pulmonary connection; TCPC(lateral tunnel)法が代わり、1990年以降はIVCと肺動脈間を人工血管で結合するExtracardiac TCPCが主流となっている。単心室に対する最終ゴールと考えられていたFontan手術であったが遠隔期にさまざまな合併症が問題となることがわかってきた。APC-Fontanでは慢性的な高中心静脈圧の負荷を受けて右房の拡大が起こり、静脈血流のうっ滞、心房性頻拍性不整脈の合併による心拍出量低下や血栓形成が出現してくる。また体静脈–肺静脈(左房)間の側副血管の発達により酸素飽和度の低下を認めることも少なくない。うっ血性肝機能障害、さらに肝硬変への進行はFALD(Fontan associated liver disease) と呼ばれ重大な合併症として認識されつつある。体循環右室の経年的収縮低下、房室弁閉鎖不全の出現、また痕跡的心室の収縮同期不全による心拍出低下も問題となる。
 再手術にあたっては肝、腎、呼吸機能などの十分な術前評価を行い、可及的に良好な心機能と全身状態が得られる術式を目標とすべきであろう。APC-FontanからEC-TCPCへのconversionだけではなく、V-V(PV or LA) collateralの処理、房室弁形成/置換、不整脈手術、ペースメーカまたは心臓再同期療法の同時施行など、長時間手術のリスクを考慮しながら選択しなければならない。これらの点について自験例を交えて述べる。