[II-YB02-05] 冠動脈病変におけるFractional Flow Reserveの有用性と課題
キーワード:FFR, 冠動脈狭窄, 冠動脈起始異常
【背景】Fractional Flow Reserve (FFR:冠血流予備量比)は成人領域で冠動脈狭窄における血行再建の適応判断や治療効果判定として一般的に使用されている。5Frの冠動脈造影カテーテルとPressure wireを用いて比較的簡便かつ安全に施行できることから、当院では心筋虚血が疑われる症例に対しFFRを施行し評価の一助としている。【目的】心筋虚血が疑われる冠動脈起始異常、先天性心疾患術後、川崎病性冠動脈瘤症例に施行したFFRの有用性および課題を検討する。【方法】2016年9月から2019年1月の間にFFRを施行した7症例(計9回)について患者背景、FFR値、転機等を後方視的に検討した。【結果】7例中、男性は5例、施行時年齢は3-22歳(中央値:15歳)、体重は10.5-58.5kg(53.8kg)。疾患はTGA ASO術後2例、左冠動脈交連起始2例、川崎病性冠動脈瘤1例、MVR後LCX狭窄1例、ペースメーカリードによる冠動脈圧迫疑い1例。計9回のFFRの施行理由(複数回施行を含む)は治療効果判定3例、心筋シンチ異常2例、胸痛、失神の精査3例、心不全の原因精査1例。FFR陽性と判定したのは、局所的な冠動脈狭窄を認めたASO術後(FFR値:0.65)、胸痛を反復していた左冠動脈交連起始(0.75)、RCAに75%狭窄を認めた川崎病性冠動脈瘤(0.79)の3例で、全例血行再建を行い2例でFFR値は正常化した。FFR陰性のうち運動時に症状を認めた2例(左冠動脈交連起始1例、TGA術後1例(LMT屈曲と肺動脈からの圧迫))のFFR値は0.82、0.9であったが、前者はATP負荷時に心電図変化を伴っていた。心筋シンチとFFRの結果は一致する傾向を認めた。全例で検査に伴う合併症は認めなかった。【考察】FFRは局所的な冠動脈狭窄症例では血行再建の適応判断、治療効果判定に有用であったが、運動時の解剖学的構造変化が虚血に関与すると思われる冠動脈起始異常や屈強病変の症例では、ドブタミン負荷などで運動時の状況再現を試みるなど今後の課題といえる。