第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

染色体異常・遺伝子異常

ポスターセッション76(III-P76)
染色体異常・遺伝子異常 4

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:武田 充人(北海道大学病院 小児科)

[III-P76-01] 当院で出生したHolt-Oram症候群症例のまとめ

伊藤 敏恭, 宮田 豊寿, 森谷 友造, 千坂 俊行, 太田 雅明, 高田 秀美, 檜垣 高史 (愛媛大学医学部 小児科)

キーワード:Holt-Oram症候群, TBX5, 心臓-手症候群

【はじめに】Holt-Oram症候群(HOS)は最も古典的な心臓-手症候群である.橈骨側を中心とした上肢の形成異常と心疾患を特徴とし,典型例では,その他の先天奇形や精神運動発達遅滞を認めないとされる.臨床的に診断されたHOSの70%にTBX5変異が認められる.当院にて非典型的な臨床経過をとり遺伝学的解析にてTBX5全欠損を認めた症例や機能解析を行った症例を経験したのでまとめて報告する.【症例1】HOSと臨床診断された母親より,正期産,正常経腟分娩で出生し,ASD,VSD,PDA,PLSVC,右心房瘤を認め,両側のfinger like thumbを認めた.児と母親に既知のTBX5nonsense変異を認めた.【症例2】正期産,正常経腟分娩で出生し, ASD,VSDを認め,両側のfinger like thumbを認めた.経過中には軽度の精神運動発達遅滞を認めている.遺伝学的検査では児にTBX5およびTBX3の欠失を認めた.【症例3】妊娠経過中にIUGRを認め,在胎26週5日に胎児心拍低下を認め緊急帝王切開で出生した.出生体重566g,Apgar 0/3.左心低形成症候群および右橈骨低形成,左橈骨欠損を認め,日齢1に永眠した.18 trisomyおよびTBX5のmissense変異を認めたが,父親にも同様のTBX5変異を認めた.この変異に対してNppa promoterを用いてLucifelase assayを行った.【考察】HOSの特徴は同一家系内でも表現型の重症度が一定ではないことで,症例1も母親やこれまでの同変異の報告例に比べ,心臓における表現型は重症であった.HOSの心奇形は75%に認められ,VSD筋性部欠損が多いことが特徴的であり,症例1および2においても多孔性の筋性部欠損を認めた.症例2に認めたTBX5全遺伝子欠失は,非常に稀であり4家系しか報告がないが,全ての家系でTBX3の同時欠失を認めている.TBX5の欠失が疑われる場合はTBX3の欠失解析も同時に行うことを考慮する必要があると考えられた.また症例3の臨床所見はTBX5変異に由来している可能性があると考えられた.