第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

胎児心臓病学

ポスターセッション77(III-P77)
胎児心臓病学 3

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:吉兼 由佳子(福岡大学筑紫病院 小児科)

[III-P77-04] 出生後にガンマグロブリン大量療法を行い軽快した抗SS-A/B抗体関連先天性完全房室ブロックの一例

桑原 義典, 大塚 雅和, 本村 秀樹 (長崎医療センター 小児科)

キーワード:先天性完全房室ブロック, SS-A, 新生児

【背景】抗SS-A/B抗体関連先天性房室ブロックは胎児期徐脈で発見されることが多く、母体にステロイド・IVIGの投与などの抗炎症治療が試みられることもある。ただし、完全房室ブロックに至った場合は不可逆的であることが多く、早期娩出・ペーシング治療の導入を検討することになる。従って、出生後に抗炎症治療を開始されることは稀である。今回、出生直前に完全房室ブロックを発症し、出生当日にIVIG大量療法を行ったところ洞調律に回復した症例を経験したため報告する。
【症例】日齢0、女児。妊婦検診では胎児の異常は指摘されていない。妊娠36週2日のNSTモニターではFHR150-160であった。妊娠36週6日朝から胎動がなく、超音波検査にてFHR60が持続していたため同日緊急帝王切開となった。出生後もHR80-90の徐脈が持続し、呻吟・陥没呼吸を認めたため当院へ搬送された。心電図では完全房室ブロックであり、心臓超音波検査では心室壁運動の低下・肺高血圧を認めた。母が抗SS-A/B抗体陽性であると判明し(後日、本患児はSS-A>1200U/ml、SS-B111U/mlと判明)、これによる完全房室ブロック・心筋炎に新生児遷延性肺高血圧を合併していると考えた。抗炎症治療としてIVIG1g/kg×2日間を投与し、イソプロテレノール持続静注、人工呼吸器管理にてO2・NOの投与も行った。日齢1に洞調律に復帰し、心室壁運動・肺高血圧も改善傾向となった。日齢23に退院し、月に1回IVIGの補充を行っている。現在(生後2ヵ月)も洞調律を維持して、心機能の低下はない。
【考察】完全房室ブロックに至って間もない症例では抗炎症治療に反応する可能性がある。しかし、出生後も抗SS-A/B抗体は長期間陽性であり、再発予防のために治療を追加すべきか悩ましい。出生後の抗炎症治療について文献考察も交えて報告する。