第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

川崎病・冠動脈・血管

ポスターセッション84(III-P84)
川崎病・冠動脈・血管 6

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:曽我 恭司(湘南東部総合病院)

[III-P84-02] 9歳発症の冠攣縮性狭心症の男児例

上嶋 和史, 稲村 昇, 丸谷 怜, 高田 のり, 西 孝輔, 杉本 圭相 (近畿大学 小児科学教室)

キーワード:冠攣縮性狭心症, 胸痛, ニトログリセリン

【背景】冠動脈が原因である小児の胸痛は川崎病性冠動脈瘤を除いて非常に稀である。今回、冠攣縮性狭心症による胸痛の症例を経験したため報告する。【症例】9歳、男児、身長 143.5 cm(+1.7 SD)、体重 42.6 kg(+1.7 SD)、肥満度14.5 %。【現病歴】2週間前に感冒症状を認めた。2日前から30分程度持続して自然軽快する右胸痛を自覚。次第に右胸痛に加えて全身倦怠感を自覚するようになったため近医受診。採血、胸部レントゲンを施行されるも異常なしと判断され一旦帰宅。しかし、夜中に再度右側腹部痛を自覚。倦怠感が強いため自ら救急要請を訴え前医再診。採血でCK上昇とTnT陽性のため急性心筋炎疑いで当院紹介となった。【既往歴】気管支喘息【入院経過】早朝にベッド上で身をよじるほどの胸痛の訴えあり。心電図検査にてHR 100 bpm, 洞調律, 下壁誘導・V4-6誘導のST上昇(0.5mV)を認めたため、ニトログリセリン舌下スプレーを噴霧すると症状は軽快した。以後胸痛の訴えはなかった。入院前、胸痛発作2時間後の心電図検査ではST変化なし。採血:CRP 1.787, WBC 9350, Net 76.0%, GOT 98, GPT 51, CK 994, CK-MB 58, TnI 11.4 ng/ml, HbA1c 6.0%, Glu 93, T.Chol 220 mg/dl, TG 158 mg/dl, エコーウイルス抗体価 急性期16倍vsペア血清16倍, BNP 80.3, H-FABP(-)。心臓超音波検査(非胸痛時):EF 71%, 左室壁運動異常なし, 心嚢液なし, 僧帽弁逆流少量。冠動脈造影:右冠動脈優位の冠動脈であるが有意な狭窄なし。運動負荷心筋シンチ:心筋虚血を示唆する所見なし。心臓MRI:LVEF 71.2%, RVEF 54.7%, C.I. 3.4-3.8 L/min/m2, 遅延造影で造影効果認めず。【診断】CRP、CK上昇、TnT陽性であり心筋炎が疑われたが、心臓MRIで遅延造影を認めなかった。胸痛時のみ著明なST上昇を認めたことから冠攣縮性狭心症の診断に至った。【結語】10歳未満発症の報告は珍しく、小児の胸痛には冠攣縮性狭心症の鑑別が必要である。