[III-TRO03-01] Near-infrared spectroscopy (NIRS)は小児体外循環の循環管理に有用か?
キーワード:Near-infrared spectroscopy, 小児体外循環, NIRO
【緒言】近赤外光領域は,「生体の窓」と呼ばれ無侵襲で生体情報を得られるため,医療において広く用いられている.心臓血管外科領域では,人工心肺による循環および呼吸補助を施行するため,患者は非生理的環境に置かれる.この環境下において,Near-infrared spectroscopy (NIRS)を用いた循環および酸素代謝管理の有用性を検討したので報告する.【方法と対象】NIRSには,浜松ホトニクス社製NIRO-200NX(NIRO)を使用した.NIROは,ヘモグロビン(Hb)の吸光度を用いて,組織酸素飽和度(TOI)を測定すると同時に,流入する総Hb量(cHb)を計測,その総量に対しての酸素加Hb(O2Hb)および脱酸素Hb(HHb)の割合を計測するという特徴がある.このHb変化を体外循環中の循環状態と酸素代謝管理の指標とする.測定部位は全症例において,測定部位は左右の前額部と下腿を測定した.対象症例は,チアノーゼの有無での差異を検討するため,同程度の月例,体重である乳児期VSDとBDG手術を施行した患児とした.NIROの各ヘモグロビン波形と動静脈血液ガス分析値により,循環状態と酸素代謝状態を検討した.【結果】対象症例群において,Hb波形の変化は循環状態を反映していることがわかった.また,TOI,cHb,O2Hb,HHb値と,酸素供給量と酸素消費量の値算値の多変量解析を行った.その結果,HHb値が循環状態および酸素代謝状態の変化に関与していた.【考察】近赤外光は,低侵襲かつ簡便に施行できるため有用である.今回,小児先天性心疾患に対する人工心肺症例において,O2HbおよびHHbの変化率の測定は,循環および酸素代謝状態に関係していることが示唆された.NIROの測定原理はMBL法とSRS法であるため,Hb変化は相対値であることに留意する必要がある. 【結言】浜松ホトニクス社製NIRO-200NXで測定される,酸素加および脱酸素ヘモグロビンの変化率は,小児体外循環中の循環および酸素代謝管理に重要かつ有用な指標である.