[III-TRO03-03] 幼児の大動脈縮窄症根治術における部分体外循環を用いた経験
キーワード:部分体外循環, 胸部下行大動脈送血, 幼児
【はじめに】大動脈縮窄症は,先天性心疾患の8~10%を占める比較的頻度の高い疾患である.高度の閉塞をもつ乳児は出生早期に手術介入となるが,それ以外は無症状のまま成長する.今回,幼児の大動脈縮窄症根治術における部分体外循環を経験したので報告する.【症例】症例は,年齢4歳男児,二尖大動脈弁を合併した大動脈縮窄症で.心室中隔欠損は認めなかった。手術時,身長105.0cm,体重16.6kg,BSA 0.69m2であった.補助循環方法は,心内修復の必要がなく管後型であったため,左側胸開による胸部下行大動脈送血,主肺動脈脱血による部分体外循環の方針となった.【方法】人工心肺回路は福岡市立こども病院S回路,人工肺はJMS社製オキシアIC-N(膜面積 0.39m2),ECUMはBaxter社製セプザイリスを使用した.総充填量は450mlであった.手術は左側開胸で,胸部下行大動脈送血にスタッカート社製2.6mm,主肺動脈脱血に泉工医科社製TWN 14Frを用いて人工心肺を確立した.その後,左総頸動脈・左鎖骨下動脈および胸部下行大動脈を遮断,狭窄部の再建を行った.止血確認後遮断解除し,上下肢の圧較差がないことを確認後,体外循環を離脱した.【結果】補助循環の灌流量0.9±0.3L/min(PI:1.3±0.4L/min/m2),動脈圧74.7±7.0mmHg,左FA 63.4±14.7mmHg,CVP 0±1.0mmHg,直腸温35.0±1.0℃で管理し,組織酸素加指標として上下肢にNIRSを使用した.体外循環時間51分,遮断時間45分であり,上下肢の圧較差なく体外循環が可能であった.【考察】今回は,順行性送血による部分体外循環を行ったが,狭窄部位により下行大動脈に送血カニューレの挿入が困難な場合がある.その場合,大腿動脈送血とし,低体温を併用することも考慮する.デバイスの選択やモニタリングを工夫し,安全に体外循環を行う必要があると考える.【結語】今回,幼児の大動脈縮窄症に対し,胸部下行大動脈送血,主肺動脈脱血による部分体外循環を経験した.