第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望演題

会長要望演題5(III-YB05)
小児心筋症の今後

2019年6月29日(土) 08:30 〜 09:20 第4会場 (中ホールA)

座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)
座長:廣野 恵一(富山大学医学部 小児科)

[III-YB05-04] 左室補助循環装置装着を要する拘束型心筋症の臨床的特徴

荒木 幹太1, 上野 高義1, 山内 早苗1, 金谷 知潤1, 奥田 直樹1, 渡邊 卓次1, 富永 佑児1, 石井 良2, 石田 秀和2, 成田 淳2, 澤 芳樹1 (1.大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学, 2.大阪大学大学院医学系研究科 小児科学)

キーワード:拘束型心筋症, 左室補助循環装置, 拡張障害

【背景】
拘束型心筋症(RCM)は,心室の拡張障害を特徴とする治療抵抗性の進行性心不全のため非常に予後不良な疾患であり,移植待機中に左室補助循環装置(LVAD)装着を要する症例が存在する.今回,LVAD装着を要する症例の臨床像を明らかにした.
【対象】
2010年から2018年の間に当院受診した15歳以下のRCM9例のうち,LVAD装着を要した4例(V群)の診断後からLVAD装着まで,さらに装着後の臨床経過,及び検査データをLVAD装着を要していない5例(N群)と比較検討した.
【結果】
観察期間は5.8±4.3年で全例生存しており,V群2例が心臓移植に到達し,N群2例が移植待機中であった.
診断時年齢は6.3±4.6年で両群間に有意差は認めなかった.診断時V群は全例有症状で即座に治療介入を要したが,N群では1例を除き全てが無症状で診断後9.0±15.3ヵ月の無治療期間を認めた.
V群のLVAD装着前とN群の直近の検査データの比較では,SvO2(53.9±7.3vs70.7±8.1%,p=0.037),E/e’(Late 14.0±0.3vs7.0±1.7cm/s(p=0.030),Sept 19.4±1.3vs7.8±1.6cm/s(p=0.030),RV 17.0±6.7vs5.4±1.4cm/s(p=0.047)),LVEDP(31.7±4.9vs21.4±4.3mmHg,p=0.025),RVEDP(17.8±3.9vs10.2±3.9mmHg,p=0.026),CVP(12.3±4.8vs6.0±2.0mmHg,p=0.026)が有意にV群で増悪していた.
LVAD装着後は,装着前に比べてPVRI(2.1±0.6vs5.4±3.4units*m2,p=0.031),PAp(18.3±5.9vs41.0±15.1mmHg,p=0.031),PCWp(11.0±6.4vs24.0±12.2 mmHg,p=0.050)が低下し,CI(3.9±1.1vs2.5±0.4 ml/min/m2,p=0.050)が上昇するが,直近のN群の検査データと比べても拡張障害の進行は顕著であった(E/e’:Late 21.2±7.7vs7.0±1.7cm/s(p=0.034),Sept 25.8±11.2vs7.8±1.6cm/s(p=0.034),RV 32.9±13.1vs5.4±1.4cm/s(p=0.034)).
【まとめ】
LVAD装着を要する症例では拡張障害の進行が早く,重症化しやすいため,LVAD装着のタイミングを逸さないよう厳密な経過観察が重要であると考えられた.