[II-OEP06-1] Circular shuntを伴う胎児Ebstein奇形症例の継時的心機能評価の経験:胎児治療導入の指標とは
キーワード:Ebstein奇形, 胎児心奇形, 胎児治療
【背景】胎児Ebstein奇形では、肺動脈弁閉鎖不全によるCircular shunt(CS)を伴う症例では急激に心不全が進行し予後不良となる。このような症例に対し、母体へのNSAIDs投与で胎児動脈管を狭小化する胎児治療が報告され始めた。【目的】当院にてCSを伴うEbstein奇形の胎児症例を経験し、継時的な各種心機能指標を観察できたため、胎児治療適応の指標としての有用性について考察する。【症例】在胎28週0日、妊婦健診時に胎児心拡大と三尖弁閉鎖不全、および胎児水腫を指摘され紹介。胎児心エコーにてEbstein奇形と診断。TRによる右室推定圧20mmHg。肺動脈弁閉鎖不全によるCSとなり、著明な腹水と皮下浮腫を認めた。MCAとUAに逆流波を認めるが、CTAR46%、右房化右室index0.62と右心房拡大は中等度であったため、7点以上が胎児治療適応のSickKidsスコアは6点であった。左室心拍出量(LVCO)は380ml/minと低かったが、LVのTei index 0.33, dP/dT 405と左室機能はある程度維持されていた。【継時的変化】29週では皮下浮腫が急激に進行、CTAR65%、右房化右室index0.95となりSickKidsスコアが8点と進行した。LVCO 370へ減少、MCAの順行性血流はさらに低下した。その後、在胎30,31,32週とSickKidsスコアは7-8点であったが、LVCOは606, 1002, 1160と増加しMCAの順行性血流は増加した。Tei indexは徐々に低下し0.25となり特にIRTが著明に短縮。循環状態は改善傾向となった。しかし、32週4日、胎内死亡が確認された。【考察、結語】SickKidsスコアでは心拡大が進行するまで8点とならず、胎児水腫の進行前の治療開始には他の指標が必要と考えられた。その後の循環状態悪化を予測するには、LVCOやMCA血流が有用かもしれない。Tei indexなどの左室機能指標は保たれており、胎内治療の適応判断には直接使用できないが、継時的変化は循環状態を反映している可能性があり、今後の症例集積により臨床的使用方法を検討する必要がある。