[II-PD06-1] 【基調講演】胎児治療 過去から現在 そして未来へ
Keywords:胎児治療, 胎児心臓病学会, 重症大動脈弁狭窄症
世界の胎児治療:Fetal Cardiac Intervention (FCI)の分野は,大きく前進しつつあるが,多くの治療は,いまだチャレンジングな領域ではある。だが,胎児の救命,自然歴を変えることができる場合には適応と考慮されてよい。もちろん,母体リスクを最小限にとどめる必要があり,高度な技術が求められるため,限られた専門施設で行われるべきである。胎児治療はメディカルチームでマネージメントされるべきで,医療スタッフ 産科医,循環器医,麻酔科医,看護師,心理士,ソーシャルワーカー などが協力し,患者の病態を評価,治療戦略を立案,両親の心理的バックアップを行いながら,施行する。特に胎児への侵襲的な治療介入については,チームとして経験値の高いさらに選ばれた高度専門施設で行われるのが望ましい。胎児治療のうち、胎児手術は心外病変,巨大な仙尾部奇形腫や嚢胞状線種などに対する治療が考慮されうるが,胎児心臓手術は現在のところ研究レベルである。安全性,有効性をある程度担保でき,推奨グレード,エビデンスレベルともにある一定レベルのものは,胎児頻脈治療とHLHSの進展する可能性がある胎児重症大動脈弁狭窄症(CAS)へのバルーン拡大術である。本邦からは画期的な多施設間prospective studyで上室性頻脈に対する薬物治療プロトコールが報告され,BostonやLinzらのグループはCASに対するFCIの成功率,有効性を時代とともに高めてきている。一方で,胎児房室ブロックに対するデキサメタゾン治療や2心室修復への到達を目指したPA/IVSのカテーテル治療については,いまだ確立したものではない。本邦では,国立成育医療センターで胎児CASに対するバルーン拡大術が始められようとしている。適応の週数のCASの胎児診断率の向上,適応判定や治療に関する情報公開など胎児心臓病学会としてもより協力体制を強めていく必要があろう。