The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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パネルディスカッション

胎児心臓病学

パネルディスカッション06(II-PD06)
胎児心臓病学「胎児治療へつなぐ先天性心疾患の胎児診断」

Mon. Nov 23, 2020 8:10 AM - 10:10 AM Track5

座長:瀧聞 浄宏(長野県立こども病院 循環器小児科)
座長:小野 博(国立成育医療研究センター 循環器科)

[II-PD06-2] 胎児重症三尖弁閉鎖不全症例の胎児期治療適応症例の層別化の可能性

石井 陽一郎1, 稲村 昇2, 橋本 和久1, 森 雅啓1, 廣瀬 将樹1, 松尾 久実代1, 青木 寿明1, 高橋 邦彦1, 萱谷 太1 (1.大阪母子医療センター小児循環器科, 2.近畿大学医学部附属病院小児科)

はじめに:エプスタイン病を代表とする三尖弁閉鎖不全疾患(tricuspid valve disease :TVD)の重症度は様々である。特に胎児期にCircular shunt(CS)を呈する最重症例の予後不良で、胎児水腫から胎児死亡に至る症例も存在する。近年、母体に対するnon‐steroidal anti‐inflammatory drugs (NSAIDs)の投与により胎児動脈管を収縮させることで、最重症例の胎児循環を改善し、出生後治療へとつなげられる可能性が報告されている。目的:TVDの臨床経過、治療成績を明らかにし、今後の胎児治療適応症例の層別化・抽出について検討する。対象・方法:2013年1月から2019年10月に発生したTVD13例を対象として、Tricuspid malformation prognosis predicting(TRIPP) scoreによる重症度と治療戦略の結果を提示する。TRIPP scoreは三尖弁逆流最大流速(TRvel)、左室Tei index(LVMPI)、肺動脈弁形態、動脈管血流を各0~2点でスコア化した総数8点の指標である。これまでの報告では生死のCut off値は4ポイントであった。結果:母体年齢平均は30.2歳で、検査時在胎週数は31.5週、分娩週数は36.1週であった。胎児超音波検査所見は、TRvel 2.8±0.6m/s、LVMPI 0.66±0.28、肺動脈弁形態は正常形態2例、機能的閉鎖5例、解剖学的閉鎖1例、肺動脈弁閉鎖不全5例であった。TRIPP score(0-8点)は4.5±2.5点で、内科的治療のみで管理可能であった症例は0-4点、2心室修復症例は3-6点、単心室修復症例は6-8点、IUFD症例は6-7点に分布していた。出生した10例は全例生存可能(2心室修復8例、心室修復2例)、6例に外科的介入を要した(三尖弁形成術 4例、Starnes 2例)で、IUFDとなった3症例は、平均26.0週にCSを確認、28.6週で胎児水腫を発症し、31.6週で死亡を確認した。考察:疾患スペクトラムが広範である本疾患群の層別化を行うことは、今後の胎児治療適応症例の選別のために重要である。近年は出生前より出生後の治療方針を決定した管理が可能となっている。結語:TRIPP scoreによる重症度の層別化は有用で、6点以上はIUFDのリスクを考慮し、NSAIDsによる胎児治療の適応となることが示唆される。